多摩動物公園のコアラ館には、コアラだけでなく、フクロモモンガやフクロギツネといったオーストラリアに生息する小獣たちを展示しています。今回はそのなかのオーストラリアガマグチヨタカ(以下ガマグチヨタカ)が、「みはらし広場」にあるワライカワセミ舎へ移動したという話をしたいと思います。
ガマグチヨタカは体長30~40cmほどで灰茶色っぽい色をしています。名前のとおり、がま口のような大きなくちばしをもち、警戒すると目を閉じて上を向き、体を細くまっすぐにした姿勢でじっと動かなくなって木の一部に擬態する姿などが魅力の、多摩動物公園の隠れた人気者です。
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いつもの姿 | 擬態中 |
さて、現在多摩動物公園では「ガマキチ」(オス)と「ガマコ」(メス)という2羽のガマグチヨタカを飼育しています。これまではガマコといっしょに「ガマオ」というオスを飼育していたのですが、2020年にガマオが死亡してしまい、1羽になったガマコの相手として2021年の夏にガマキチを迎え入れました。
しばらくコアラ館で飼育していたのですが、屋内施設に比べると日照時間や気温に変化のある屋外のほうが季節を感じられるので繁殖に向いているのではないかということから、繁殖をめざして引っ越すことにしました。現地オーストラリアでの繁殖期は8月~12月。日本は北半球ですので、だいたい2月~6月が繁殖期となります。
2021年10月26日、ヒーターなどを設置して環境を整えたワライカワセミ舎に、まずガマキチを移動させました。ガマキチが前にいた施設で飼育されていた場所は屋外だったため、屋外への移動はそれほど心配していませんでしたが、ワライカワセミ舎に移動したガマキチは、急に変わった環境を警戒して日中のほとんどの時間を擬態したまま過ごし、えさもほとんど口をつけなくなってしまいました。えさを直接口に入れたりして少しでも食べてくれるように工夫をしているうちにだんだんと慣れてきたのか、えさを食べるようになり、体重も戻ってきました。
ガマキチに遅れること約3週間、ガマコもワライカワセミ舎に移動しました。ガマコは2007年に来園して以来ずっと屋内生活だったため外に出すのはちょっと心配だったのですが、ガマキチよりもずっと落ち着いており、えさも数日で食べてくれるようになりました。
引っ越したばかりのころはそれぞれ離れた場所に止まっていることが多かった2羽ですが、今では並んで岩の上ですごす姿がよく見られるようになりました。このまま距離が縮まって、これから迎える繁殖期でいい結果が出せるように私たちもサポートしつつ、2羽にはがんばってもらえたらと思います。
2羽でくっついてます
(左:ガマキチ 右:ガマコ)
〔多摩動物公園動南園飼育展示係 高村〕
(2022年02月04日)