多摩動物公園で飼育するキリン「アオイ」(メス)が死亡したのでお知らせします。
アオイは1997年8月16日に多摩動物公園で生まれ、24歳でした。当園で飼育するキリンのなかではもっとも高齢で、これまでに7頭の子を産んでいます。
12月23日の朝に、起き上がれないところを飼育係が発見し、起立させるよう試みましたが、起立不能である状況が続き回復が見込めないところから、今後苦痛が増大していく状況と判断し、たいへん残念ではありますが、やむを得ず、安楽死処置をおこないましたので、報告します。
キリン「アオイ」
これまでの治療経過など
2021年12月23日
朝の放飼時にアオイが寝室で座っており、その後起立不能であることが判明しました。立ち上がれない状態でもえさや水を与えると勢いよく採食しました。
大型の草食獣の場合、横になったままだと消化管機能が低下し、腹部にガスが貯まり呼吸が苦しくなります。
夕方にはほかのキリンが舎内に戻ってくるため、何度か起立させようと試みましたが、起き上がらないため、アオイが安心して休息し、体力が回復できるようになるべく静かな管理をおこない、生活の質(QOL)を維持するように努めました。
2021年12月24日
前日と比べて、座っている場所と身体の向きが少し変わっていましたが、起立不能は変わらず、座っている状態でかろうじて左後肢以外は動かせる状況でした。敷きワラを追加し、えさや水を近くに置いて与えると通常の7~8割食べました。反すうや排便の確認もできました。
2021年12月25日
前日の座っていた場所から動いたようすはまったくなく、首を上げて頭を高く保つのが困難な状態でした。右後肢以外の肢はまったく動かせずに、腹式呼吸をしていました。加えて、好物の枝葉や固形飼料を与えて採餌を促しましたが食べることはなく、水も飲みませんでした。座っている状態が続いていることから褥瘡(床ずれ)ができていたため、敷きワラを追加し、安心して休める環境づくりに十分配慮しました。
安楽死処置の判断と実施
2021年12月25日朝
これまでの状況の推移と今朝の状況について、開園前に園長、獣医師、飼育係らで検討した結果、以下の理由から安楽死処置をすることで、アオイに苦痛を長引かせることを避けるのがアニマルウェルフェア(動物福祉)につながるものと判断しました。
安楽死処置判断に至る理由
・4肢のうち3肢が動かないため起立が見込めず、苦痛を取り除くことが困難な状況であること。
・高齢であり、麻酔のリスクを冒して、帯ロープなどを使用した起立補助はかえって苦痛を与えてしまい、アオイにとって今後の生活の質(QOL)を損なうこと。
・呼吸が荒くなってきており、今後呼吸困難が進行すると考えられること。
・今後、遠からず横になったままになり、その場合、内臓の圧迫や床ずれがさらに増し、新たな苦痛と敗血症などを生じる可能性が高いこと。
・群れ飼育しており、他個体と夜間同居していることからさらにケガをしてしまうこと。
以上より、今後状態が急速に悪化していくことが予想されたため、当日の午後に苦痛を感じさせることのないよう配慮した方法で、安楽死処置をおこないました。
処置後の対応
処置後、すみやかに解剖をおこなったところ、肝不全と右前肢球節の炎症が確認されました。解剖により得られた貴重な情報の数々は、より多くの動物を救うため今後の獣医療に活かしていきます。
翌26日に国立科学博物館にアオイの遺体を提供しました。博物館で研究や標本などとして活用いただく予定です。
なお、動物へのお花などのお供え場所は慰霊碑としていますので、キリン舎周囲への献花などはご遠慮ください。ご足労をおかけいたしますが、慰霊碑へお願い申し上げます。
このたびはたいへん悲しいお知らせとなりましたが、ご理解いただきますようお願いいたします。
(2021年12月28日)