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多摩動物公園のシフゾウたち
 └─ 2021/12/10
 シフゾウは大型のシカのなかまで、多摩動物公園では現在「アオバ」(オス、14歳)、「カオル」(メス、19歳)、「セナ」(メス、16歳)の3頭がくらしています。オスのアオバがもっとも若く、3頭のなかではいちばん体力があります。

 シフゾウはオスにだけ角があります。ヤギやウシのなかまはオスメスともに角があり、一生生え変わることはありませんが、シカのなかまは角が毎年生え変わります。

 生え変わりのとき、古い角は自然に取れて落ちるのですが、片方で2kg近い大きな角が突然ポトリと落ちるので、かなりショッキングな場面となります。落とした本人も驚いて走り回ったり、その後ションボリして少し元気がなくなったりします。この落角(らっかく)は年末から年始のころに起こることが多く、角完成のサイクルは繁殖期と大きな関係があります。

 アオバは今年1月4日に落角したあと、袋角(ふくろつの)が成長し、初夏に破角(はかく)、現在の角が完成しました。次の落角はいつでしょうか?

アオバの角落ちる
(撮影年:2018年)
今年の角完成
(撮影日:2021年6月2日)

 メスの2頭は人間の感覚では「まだ10代」と思われるかもしれませんが、すでに高齢の域に入っています。シフゾウは18歳くらいが寿命と言われ、20歳を超えられる個体はそうとうな長寿なのです。

 2頭にはできるだけ快適にのんびりとすごしてもらえたらと思い、飼育管理をしています。

 若い個体なら好まない乾かした草のようなえさでも、強い体をつくるために必要なので(粗飼料と言います)、なんとか食べさせるよう工夫して与えます。また、初夏から初秋にかけての発情期には、繁殖につながるよう暑いなかでも交尾の機会を増やすことがありますが、高齢の2頭には、少しゆるい生活をしてもらうようにしています。

 たとえば、若いときほど歯も強くなく大量に食べることもできないので、やわらかい生の草を多めに与えたり、発情期には熱中症にならないよう追尾や交尾行動を慎重に観察して無理のない範囲でおこなったりするようにしています。特にカオルはオスの追尾が激しいと逃げきれず危ないため、単独で生活する時間をつくっています。

 多摩動物公園では、これまで1978年に初めて生まれた「ハツコ」から、25頭のシフゾウが誕生しています。メスは2~4歳で繁殖を開始し、初産の最高齢は6歳、経産メスを含めた最高齢は12歳となっています。

 現在の3頭には繁殖歴がなく、年齢的にも難しい状況となっています。なんとか繁殖してもらいたい思いを持ちつつも、少しでも元気で長生きしてもらい、みなさんにこの不思議な動物「シフゾウ(四不像)」について、もっと知っていただけたらと思っています。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 松井〕

(2021年12月10日)



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