2021年8月15日、アフリカゾウ「砥夢(トム)」(オス、12歳)の体重測定を試みました。毎年この時期に体重測定をおこなっており、今年で7回目になります。
初めのうちは飼育係を見ると無邪気に測定場所(柵内)に入ってくれましたが、年に一度しか入らない慣れない場所のためか、成長するにつれて警戒心を持つようになり、昨年あたりから測定に時間がかかるようになっていました。そして、今年は測定場所に近づくことすらためらう状況になっていました。人間も同じですが、上手くいかないときはやみくもに続けてもいい結果にはつながらないものです。そのため、この日は測定を断念し、後日再び測定を試みることにしました。
ところが、ここからが長かったのです……
いきなり体重計まで誘導することはあきらめ、今日はこの位置まで安定して接近するようになったら終了というふうに段階的にトレーニングをおこないました(写真 左)。さらに、今までは夕方に測定していたのですが、時間帯を変更し、空腹でやる気がある朝におこないました。また、長時間続けることで砥夢が徐々に飽きて、やる気を欠く心配もあったため、時間は約10~15分と比較的短時間とし、測定場所でも安心できるようにひたすら回数を重ねました。そして徐々に測定場所に慣れていき、9月29日、12回目の試みでようやく体重を測定することができました(写真 右)。
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測定場所の手前まで誘導したところで 褒美に根菜やリンゴなどを与える | 体重測定成功時 四肢がしっかり体重計に乗っている |
今回の砥夢の体重は4,670kgで、昨年(2020年8月15日)から675㎏の増量でした。
アフリカゾウの体重はおとなになるまでは1日に1㎏ずつ増えるといわれていますが、それを超える大幅な増加です。砥夢が順調に成長していっていることがわかり、うれしい限りです。
ところで、この体重測定をおこなっている緑の枠組みの柵は「スクイズケージ」といって、横幅が狭まる仕組みになっています。横幅が狭まることで身体の可動範囲が少なくなり、人間が安全に動物の体にふれることができます。ゾウは非常に高い知能を持ち、トレーニングしだいで多様なことができます。今後スムーズに体重測定ができることに加えて、この仕組みを利用してさまざまな処置ができるようにトレーニングを継続していこうと思っています。
体重測定初日から約3ヶ月がすぎた現在、ふだんは第一放飼場にあるPCW(Protected Contact Wall)でおこなっている牙の治療がこの場所でもできるようになりました。今後のトレーニングで砥夢がどこまでできるようになるか、期待が高まります。
スクイズケージで牙の治療をおこなうようす
〔多摩動物公園北園飼育展示係 山本〕
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