いま、上野動物園の赤ちゃんパンダは動画で絶賛公開中! もこもこフカフカの愛くるしいようすは見ていて飽きません。さて、多摩動物公園でも「パンダ」が見られることをご存じの方はいらっしゃるでしょうか。
「あ!あれのこと?」とすぐ思いついた方は「たまどう通(つう)」。ウォッチングセンター1階に、約50年前の日本にパンダフィーバーを巻き起こした「ランラン」と「カンカン」のはく製が展示されています。
ジャイアントパンダの剥製
ランラン・カンカンは正真正銘のジャイアントパンダですが、「多摩のパンダ」と聞いてレッサーパンダのことを思い出された方もいらっしゃることでしょう。こちらも当園の人気動物のひとつで、竹を食べたり木登りをしたりするようすは動くぬいぐるみのようです。
では、もうひとつ。園内の道端でも見られる「パンダ」がいると言ったら何かわかりますか? それは、4月~11月にかけて見ることができ、白と黒色の1cmほどの昆虫、通称「パンダムシ」。オジロアシナガゾウムシのことです。
クズのツルにつくオジロアシナガゾウムシ
白黒模様で丸いフォルムはまるでパンダのよう。ただ、パンダというより鳥のフン?と思うかたもいらっしゃるかもしれません。それもそのはず。この模様で鳥のフンに擬態し、外敵から身を守っているのではないかと考えられています。
ジャイアントパンダの白黒模様は毛の色です。生まれたてのパンダの赤ちゃんは毛がなく、ピンク色の肌をしていることを思い出せばご納得いただけるでしょう。
オジロアシナガゾウムシはというと、地は黒色で、鱗毛が生えている部分が白く見えます。写真を拡大してみると、白い部分だけフサフサしています。この鱗毛が濡れると、全体的に黒っぽく見え、パンダらしさがなくなってしまいます。
オジロアシナガゾウムシは、クズの葉やツルにしがみついていることが多く、捕まえようとすると体を丸めてポロン!と落ちてしまいます。体を丸めて死んだふりをする姿は、パンダが寝ている姿に見えなくもありません。
死んだふりをするオジロアシナガゾウムシ
この虫の赤ちゃんはパンダとは似ても似つかず、イモムシ状の幼虫です。親はクズのツルにらせん状に産卵し、幼虫は茎に虫こぶを形成して成長します。
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クズのツルの産卵跡 | 虫こぶ内のさなぎ |
オジロアシナガゾウムシはクズの葉が枯れてしまうと見つけにくくなりますが、成虫で越冬するので冬でもよく探せば植物の枝などにくっついている姿が見られるかもしれません。
2021年10月24日現在、昆虫生態園の出口側(右ウィング)で成虫を展示していますので、ぜひご自身の目でその「パンダ」っぷりを確かめてみてください。
※飼育している虫の状態により、展示を終了する場合があります。ご了承ください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 佐々木〕
(2021年10月24日)