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キリン「ジル」の一人暮らし
 └─2021/03/12
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため再び臨時休園をしている最中、サバンナでは7歳になるオスのキリン「ジル」を群れから離すという大きな変化がありました。


日中、オス舎から小放飼場に出てきたジル(2021年2月1日撮影)

 ジルは2015年に2歳で多摩動物公園に来園以来ずっと群れの一員としてくらしており、今まで合計16頭の子どもの父親として、多摩でのキリンの繁殖に貢献してきました。ただ、発情したメスがいると長時間追い回し、独占しようとしてジルが他の個体を追い払う行動が以前からありました。そうすると、群れ全体が落ち着きをなくして走り回り、転んでケガをしたり、十分な食事がとれなくなったりします。

 また、子育て中のメスが発情したときにジルが交尾を迫ると、子が母親に近づけず、満足に乳を飲めなくなってしまいます。昨年(2020年)11月に出産した「ユリネ」は、12月中旬には子とともに群れに加わったのですが、ジルがさっそくユリネを執拗に追い回していたため、1月1日以降、ジルを日中は外の小放飼場、夜間はオス舎に隔離し、1頭で飼育することにしました。

 隔離を始めた当初は、夜暗くなるまでオス舎に戻らなかったり食欲が少し落ちたりするなど、心配事が続きました。その後、徐々にオス舎にスムーズに戻ってくるようになり、食欲も以前のように旺盛になってきました。また、夜間は落ち着かずに同じ場所を行き来する行動を頻繁に繰り返していましたが、日を追うごとに環境に慣れてきたのか、そうした動作も回数が減りました。今では、えさを食べて少し歩き回り、そのあと数時間座って休むというローテーションで行動して、翌朝まで落ち着いて過ごしています。

 今のところ、群れに戻りたがる素振りはジルにはなく、日中は採食しながらオス舎と小放飼場を行き来して、ときおり群れを眺めながら過ごしています。群れの中で四六時中メスを追いかけ、まわりの個体を威嚇していた頃と比べて、そのような荒々しい一面はなくなり、以前よりもリラックスしていることが多いように見えます。一方、群れのキリンたちは、ジルの動きに振り回されずに休憩や採食や授乳を存分にできるようになりました。

 もうしばらくの間、ジルには1頭で暮らしてもらうことになります。ユリネの子「ユウヒ」が成長して母乳以外のえさを十分に食べられるようになったら、ようすを見ながら群れに戻す予定です。それまでにジルが健康に一人暮らしを満喫できるよう、飼育係一同、日々の飼育管理と観察に努めます。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 小森〕

(2021年03月12日)



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