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ナベコウの繁殖作戦! コウノトリには偽物の卵を……
 └─2021/03/05
 多摩動物公園のコウノトリ舎ではナベコウが巣を作り始めました。巣作りしているケージには、ナベコウのペア以外にニホンコウノトリのオス2羽、インドクジャクのオス1羽とメス2羽が同居しています。同居しているニホンコウノトリは、繁殖する時期や巣の形などがナベコウと似ているので、巣材やえさの奪い合いにならないよう工夫が必要です。

 そこで、同居しているニホンコウノトリがペアにならないようオスだけにしました。ところがメスがいないというのに、そのオスは、ナベコウのために用意した巣材を使って立派な巣を作り始めてしまったのです。ナベコウの繁殖行動はこの状況の中で始まりました。

 ニホンコウノトリに比べて体格の小さいナベコウは、これまでも狙った巣材を横取りされたり、繁殖期に与えられる栄養価の高いドジョウをすべて食べられてしまったりしており、このままではちゃんと巣作も産卵もできません。そこで作戦開始です。

巣台の上で擬卵を抱いているニホンコウノトリのオス
擬卵(左はシリコン樹脂製。
右は過去に卵のかわりに抱き続けた石)

 ナベコウのケージに残したニホンコウノトリのオスには好みの巣台があります。そこに偽物の卵(擬卵)を置きました。すると狙い通り大切に擬卵を抱き始めました。本来コウノトリは雄雌交代で卵を抱きますが、相手のいないこのオスは1羽で抱き続けます。体力等を計算し、コウノトリの孵化日数である40日間程度ずっと抱いてもらいます。
 
 その間、ナベコウにはしっかり巣作りと産卵をしてもらうという作戦です。ナベコウはある程度巣ができあがると産卵を始め、その後卵を抱きながら、さらに巣を整えていきます。

ナベコウのペア
昨年(2020年)孵化したナベコウのひな
 ナベコウのひなは親の姿からは想像できないほど真っ白な羽毛で覆われており、とても愛くるしい姿をしています。産卵そして孵化とうまく進めば、4月中旬から5月中旬にはかわいらしいひなの姿が見られる予定です。

 じつはこの擬卵作戦、昨年(2020年)もおこなって無事繁殖に成功した実績があります。少しかわいそうな気もしますが、ナベコウの繁殖を優先し、ニホンコウノトリのオスには少しのあいだ騙され続けてもらうことになります。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 川鍋〕

(2021年03月06日)



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