多摩動物公園昆虫園では、トカゲをはじめとした肉食性の動物も飼育しています。その重要なえさになっているのがフタホシコオロギです。
フタホシコオロギ成虫 左:オス、右:メス
フタホシコオロギはその名のとおり、成虫になると一対の黄白色の斑紋をもつ、黒っぽい色のコオロギです。おもに亜熱帯の温暖な地域に分布し、日本では沖縄などに分布しています。温度を保てば一年を通してよく増えるため、動物のえさや実験動物として非常に有名な存在です。同じくえさ用の昆虫としてメジャーであるイエコオロギとは異なり、あまり跳ねないので扱いやすいことが特徴です。
昆虫園ではフタホシコオロギを飼育・繁殖させ、およそ20種の肉食性昆虫やカエル、トカゲなどに与えています。
フタホシコオロギを捕食するシロモンオオサシガメ
そのためにえさとして週に数百匹のコオロギが必要になります。また、食べる動物の種類や大きさによって必要なコオロギのサイズが異なります。そのため、さまざまなサイズのコオロギを十分に維持する必要があり、毎日たくさんの幼虫を孵化させています。
孵化したばかりのフタホシコオロギの幼虫たち
コオロギのえさはキャベツと固形飼料です。キャベツは水分補給の役割をかねているため、毎日新鮮なものを与える必要があります。また、えさが不足すると共食いが増えてしまいます。共食いを防ぐためにはえさを切らさないことと、そして1つのケースのコオロギの数を制限することが大事です。さらに、ケージ内が不潔だとコオロギが病気になるので、糞や食べ残しはまめに掃除する必要があります。
コオロギを飼育する部屋の室温は約30℃を保っており、卵は9日ほどで孵化します。孵化したての幼虫はとても小さく、 体長2mm程の大きさしかありません。その後、脱皮を繰り返し、およそ30日かけて体長30mm前後の成虫になります。
フタホシコオロギが関心を集める機会はあまりありませんが、昆虫生態園出口側(右ウイング)で展示もしています。昆虫園をかげで支える彼らにもぜひ注目してください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 城〕
(2021年02月26日)