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ボルネオオランウータン、「ひな」の来園と「ホッピー」の誕生
 └─2021/02/19
 多摩動物公園のボルネオオランウータン舎では、昨年(2020年)10月に釧路市動物園からメスの「ひな」が来園し(お知らせ)、10月末にはオスの「ホッピー」が生まれるという嬉しいニュースがありました(お知らせ)。その10月のひなの来園とホッピーの誕生とその後のようすについてお伝えします。

「ひな」がやってきた!
 2020年10月14日16時頃、「ひな」を載せたトラックが多摩動物公園に到着しました。到着時の健康状態は良好で、担当者ににも友好的な反応を見せていました。


初めて屋外放飼場に出た「ひな」

 状況ががらりと変わったのは到着翌々日のこと。急に元気がなくなり、ふさぎ込むような姿を見せるようになってしまったのです。人工哺育で育ったひなにとって、飼育環境の変化と担当者の交代は、精神的に大きな負担があったのでしょう。緊張が和らぎ自発的な行動が見られるようになったのは、来園から2か月が過ぎたころでした。それ以降は一歩一歩着実に新しい環境へとなじみ、1月16日に屋内放飼場、1月26日には屋外放飼場に出られるようになり、日光浴をしたり、草を引き抜いて食べたり、落ち着いたようすです。

 多摩動物公園に来園した大きな目的は、ひなにオランウータンの社会性と子育てを学ぶ機会を与えることです。オランウータンは、母と過ごす中でこれらを学習しますが、人工哺育で育ったひなには、その機会がありませんでした。複数のオランウータンに囲まれて生活し、間近で子育てを見せることで将来的な繁殖に繋げることを考えています。

 そこで、放飼場に慣らすのと同時に、ひなには他個体との顔合わせも重ねてきました。窓ガラス越しの顔合わせの際は、じっと眺めるひなに他の個体が興味津々で近づいてくるなど、互いにまずまず良好な反応を示していました。しかし、いざ格子越しに会わせてみると、恐怖心からか、ひなは毛を逆立てて低いうなり声で威嚇し、格子を叩いて攻撃するなど、ふだんのようすからは想像できないような行動をとりました。ひなを多摩の環境に慣らして目的を達成するには、まだまだ試行錯誤の日々が続きそうです。

「ホッピー」が生まれた!
 2020年10月30日15時45分、「チャッピー」の強い陣痛を確認後、15分経ってオスの子が誕生しました。出産直前のチャッピーは、陣痛の痛みから床を転げ回ったり、うずくまったり、落ち着かないようすでしたが、子の頭が出てきたかと思うとつるりと全身が出て、出産はあっという間に終わりました。出産後はすぐに子を抱き上げて羊水などを舐め取ると、その日はそのまま麻袋を被って眠りにつきました。

 翌日には授乳を確認することができました。「ホッピー」と名づけたこのオスの子は、毎日ジュッジュッと力強い音を立てながら母乳を吸い、ゴクゴクと飲んで成長しています。一方、一緒に過ごしている兄の「アピ」はホッピーのようすを覗いたり、そっと触れてみたり、すぐにその存在をしっかりと受け入れたようでした。

格子につかまる練習中のホッピー
格子につかまるのにも慣れました

 母親のチャッピーは、今回を含め7回の出産(死産1回を含む)を経験し、5頭の子どもを育て上げてきました。6頭目となるホッピーの育児もお手の物で、どうやらわれわれ飼育担当者の出る幕はなさそうです。最近は、高く上げた腕に登らせたり、格子につかまるよう促したり、ホッピーの教育にも熱心に取り組んでいます。47歳という国内最高齢での出産となった心配をよそに、今日も母子は元気に過ごしています。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 山本〕

(2021年02月19日)



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