蒸し暑い夏が苦手なタスマニアデビルですが、秋が来て気温が下がってくると活発になります。食欲が増し、日中に放飼場を走る姿が良く見られるのは今の時期からです。たくさん食べて、ムチムチとした体つきになっていきます。
そんな「天高くデビル肥ゆる秋」に多摩動物公園ではぬいぐるみのタスマニアデビルがデビューしました。監修を飼育係がおこなうことになったため、デビルの体つきや特徴を、あらためて写真で再確認しました。
今回は座った姿勢でリアルな感じのぬいぐるみを制作します。初回の打ち合わせでサンプルを見せてもらいましたが、なんだか違う動物のようなシルエット。デビルは頭が大きく、年齢を増すごとに首回りに筋肉がついて太くなり、ずんぐりした体になっていきます。この筋肉が、哺乳類の中で最大といわれる噛む力を支えています。どのように伝えたらあのムチっとした後ろ姿を作れるかを話し合い、本物のデビルを見たことがない制作現場の人には「太った柴犬の後ろ姿」をイメージして改良してもらうことにしました。
できあがったぬいぐるみ。なかなか、完成度の高いボディラインになりました。
顔つきは、目が吊り上がっているけどもかわいらしく、困ったような眉毛、口から覗く小さな犬歯。胸とお尻に白いポイントを付けてもらうとだいぶデビルらしくなりました。耳は「両面濃いピンク色」にすることにしました。デビルの耳は厚みがなく、表も裏も毛が薄いため日の光が当たったときや体温が上がったときに薄いピンク色から赤っぽい色に変化して見えるのです。この赤く見える耳もデビルの大きな特徴なので、これを表現しなければと考えました。
じつは今回の監修は2回目で、以前に寝そべったデビルのぬいぐるみを制作したときも悩みの種は耳の色でした。両面ピンク色は気持ち悪いのではないか、不自然ではないか、どのくらいの色の濃さがしっくりくるのか。試しにピンク色と黒のサンプルを作ってもらいました。写真と比べると黒の方が不自然なのでピンクにしました。走った後のひと休みを想定し、濃いピンク色です。
寝そべったデビルは足の裏が見えるのがポイント。後ろ足の裏が見えるように縫製を工夫してもらいました。
タスマニアデビルは「怖い、獰猛」というイメージが強い動物ですが、じつはかわいらしく、おとなしくて慎重な動物です。そんなデビルの本質をぬいぐるみを通して感じていただければと思います。
※タスマニアデビルの新しいぬいぐるみは、多摩動物公園内のギフトショップで販売中。
価格は税込2,970円です。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 永田典子〕
(2020年11月27日)