多摩動物公園のインドサイの放飼場ではインドガンも飼育しています。そのインドガンのひなが、2020年6月9日に3羽、13日に1羽孵化しました。
5月初旬から産卵や抱卵は見られていましたが、あまり“気が乗らない”らしく、卵を産んで世話をせずそのままにしてしまったり、抱卵をすぐに放棄してしまったりしていたため、今年は繁殖はないかと思っていました。
しかし、1週間ほどすると急にスイッチが入ったように営巣地での抱卵が7ペアほど、始まりました。場所は来園者の方が通る道から見て右側、インドサイが入ることができない高台です。観察しているかぎり日中はずっと抱卵し、親鳥は近づいて来た野生のカラスに対して協力して追い払う行動も見られました。
インドガンの孵化までの期間は28日から30日といわれるとおり、集団で営巣し始た5月中旬から約1か月経って卵が孵化したようです。
2020年6月9日、孵化当日
6月9日に生まれた3羽は親が異なります。孵化当日の朝、3羽のうち2羽はメス「W-0040」とそのパートナーのオスと一緒でした。もう1羽は朝は別のおとなと一緒にいましたが、夕方になると他の2羽のひなとともにW-0040のペアに守られながら歩いていました。
6月13日に孵化した1羽も、朝は自分の親と一緒でしたが、1日後にはW-0040とその子どもたちと行動をともにするようになっていました。インドガンは群れで行動する鳥なので、「親2羽と子1羽」でいるよりも安心するのでしょうか。W-0040のペアはしっかり子育てをする2羽で、ひなの前後や左右について、カラスや他の個体からひなを守っていました。
孵化直後は頼りない印象のひなたちですが、成長はとても早く、日を追うごとに大きくなっています。1週間もするとおとなとまったく同じえさを食べるようになりました。また、プールの浅いところで泳ぐ姿も見られます。
2020年7月3日、おとなに混じってえさを食べているひなが見えます
この後、4羽のうち2羽は残念ながら死亡してしまいましたが、他の2羽はすくすくと無事に育っています。この記事を書いている今は孵化後3週間ほどですが、ひなはすでに営巣地の外に出て、えさを食べに来たハトを追い払ったり、おとなの群れと行動をともにしたり、行動面でも成長を感じられるようになりました。ひなの目印だった黄色い羽もくすんできたようです。
インドサイ舎にお越しの際は、サイだけではなくインドガンの成長にもご注目ください。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 嵐田彩奈〕
(2020年07月10日)