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アリの女王探しにチャレンジ!
 └─2020/06/21

 アリの女王を野外で見たことがある方はいらっしゃいますか? アリのほとんどの種は女王だけが卵を産み、同じくメスの働きアリや兵アリは繁殖せず、分業の中で自分の仕事に専念して群れを維持する社会性昆虫です。

 女王アリはふだん巣の中にいるのでなかなか目にすることができませんが、見つけやすいタイミングがあります。新女王アリと雄アリが空に飛び立つ「結婚飛行」の時期です。よく道端で目にするアリに翅はありませんが、新女王と雄アリには翅があり(写真1)、空中で交尾をします。無事交尾をすませると、女王アリは翅を落とし、巣に適した場所を探して歩き回ります。女王をいちばん見つけやすいのはこの時です。


翅のあるクロオオアリ女王

 女王は働きアリに比べて胸や腹が大きく、胸の部分に翅の抜けた跡があります。とくにクロオオアリやムネアカオオアリの女王は体が大きく、ふつうの働きアリとは一見して違うので見つけやすいでしょう(写真2)。草木の陰などに隠れてしまうと見つけにくいのですが、アスファルトの地面を歩いている時は目立つので探すのにオススメです。


ムネアカオオアリの女王と働きアリ。サイズの違いが一目瞭然

 結婚飛行の時期はアリの種類によって異なり、東京だと4月はクロナガアリ、5月はクロオオアリ、6月はクロヤマアリ、7~8月にかけてはトビイロケアリがよく見られます。また、クロオオアリは夕方、クロヤマアリはお昼頃に見つけやすく、種によってねらい目の時間帯もあります。

 結婚飛行がよく見られるのは、雨があがった後、晴れて蒸し暑く、風のない日です。その条件にあてはまりそうな日を天気予報を参考にして狙い、採集の準備をします。今年(2020年)は5月10日前後にクロオオアリとムネアカオオアリの女王を採集することができました。

 飼育ケースはアリ専用の飼育セットが売られていますが、用意できなければ最初はプラスチックのカップでも大丈夫です。乾燥すると死んでしまうので、必ず湿らせた紙やスポンジなどを入れてください。

 暗く静かな場所に置いておくと、採集後数日もすると産卵し始めます。最初の働きアリが羽化するまで女王アリはえさを食べず、自分の体にある栄養だけで子育てをおこなうため、えさを与える必要はありません(写真3)。働きアリが生まれたら、砂糖水や煮干しなどを与えましょう(クロナガアリは種子を食べるので小鳥のえさなどを与えます)。


子育て中のクロオオアリの女王。幼虫と蛹の世話をしている


クロヤマアリの働きアリ

 6~7月はクロヤマアリやトビイロケアリの女王探しがねらい目ですが、それ以外の季節でも、春から秋にかけてさまざまな種類のアリが結婚飛行をします。ぜひ女王アリ探しを楽しんでみてください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 佐々木愛子〕

(2020年06月21日)



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