多摩動物公園の昆虫生態園入口側にある「南西諸島のいきもの」のコーナーに、タイワンサソリモドキがいます。頭部の前に突き出した立派なハサミや腹部の先に伸びた長い針状の突起がサソリを連想させる、不思議な姿をしています。
このタイワンサソリモドキは八重山諸島に生息しており、湿った場所を好んで日中は石や朽木の下などに隠れてくらしています。昆虫園では、ほどよく湿らせたピートモスを5cmほど敷きつめたケースに、樹皮のかけらを1〜2枚入れて飼育しています。共食いのリスクを避けるため、ケースは1頭ずつ用意します。
すると、それぞれが思い思いに自分の“家”をこしらえるのです。ある者は樹皮の下に隠れるだけ、またある者は樹皮をうまく屋根にしてその下に部屋をつくり、またある者はとにかく掘りまくって立派な洞窟をつくり、またある者は底に出入口のない部屋をつくってこもるばかり……本当に個性的です。
自分の“家”は、樹皮の下にもぐっただけ…
しっかり掘って、立派な洞窟を作りました
これをみているだけなら楽しいのですが、飼育係を悩ませているのは、来園した皆さんに姿をみてもらうにはどうしたらよいのかということ。隠れる場所がないとすぐに穴を掘って地下に潜ってしまいます。外から姿は見えるけれどタイワンサソリモドキにとって居心地の良い場所を作る、という目標のもと何人もの飼育係がこの攻防戦を続けてきました。そして今、どうなっているのか……ぜひ昆虫園に足を運び、ご覧ください。
多摩動物公園は2020年6月4日に再開園しましたが、現在昆虫園は新型コロナウイルス感染拡大防止対策として閉鎖中です。状況を確認しながら順次再開していく予定です。再開が決まりしだい、東京ズーネットや
多摩動物公園のツイッターでお知らせしますので、もうしばらくお待ちください。皆さんのご来園を楽しみにしています。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古川紗織〕
(2020年06月19日)