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多摩動物公園のヤマアカガエルとアズマヒキガエル
 └─2020/05/08

 丘陵地の自然が残る多摩動物公園の園内にはさまざまな野生生物が生息しており、カエルなどの両生類も見られます。そのうちの2種、ヤマアカガエルとアズマヒキガエルについてご紹介しましょう。

ヤマアカガエル

 ヤマアカガエルは現在、東京都内で減少が危惧されていますが、幸いにも園内には多数生息しており、2月の繁殖期になると園内の池や動物舎の水辺で産卵しています。

 ボルネオオランウータンの「スカイウォーク」の下にある池では生息状況把握のために産卵数を記録しており、毎年安定して40ほどの卵塊が見られます。記録は今年で4年目を迎え、この産卵数が生息状況を把握するための一つの基準になりそうです。また、繁殖期には日中でも鳴き声が聞こえてくることがあります。動画のような鳴き声が聞こえたら、その正体はヤマアカガエルです。


【動画】鳴いているヤマアカガエル


ヤマアカガエルの卵塊

アズマヒキガエル

 もうひとつの代表的なカエルはアズマヒキガエルです。かつてこのカエルは雨の園内を闊歩し、不意に現れてはカエルが苦手な飼育係を驚かせていたのですが、今はまったく見かけません。生息状況が心配され始めた2016年以降、毎年園内の産卵数を記録しているのですが、昨年は多摩動物公園に隣接する七生公園で2卵塊ほど、今年はスカイウォーク下の池で1卵塊しか確認されませんでした。ここ数年はカエル成体の目撃情報もないことから、園内で絶滅してしまうかもしれず、今後の保全活動が急務です。

飼育下で繁殖したアズマヒキガエルの卵塊
アズマヒキガエル(飼育個体)。繁殖に向けた
「気分」が高まったオスがメスに抱きついている

 アズマヒキガエルが減った原因の一つとして考えられるのは、アライグマの影響です。園内のヤマアカガエルやトウキョウサンショウウオはアライグマによる捕食が確認されており、ヒキガエルも同様に襲われている可能性もあります。その瞬間をとらえた動画をご覧ください。


【動画】ヤマアカガエルを捕まえたアライグマ。口にくわえている

 存続が危ぶまれる園内のアズマヒキガエルですが、都立の動物園・水族園(多摩動物公園のほか、上野動物園、葛西臨海水族園、井の頭自然文化園)では、多摩園内の卵塊のごく一部を採集し、飼育下での繁殖に取り組んでいます。現在は二世も誕生しており、いずれ子孫を園内に放つ日がやってくるかもしれません。

 カエルは苦手な方も多い生き物ですが、園内の自然環境を象徴する生き物のひとつです。4園の活動によって大量のアズマヒキガエルが園内を歩き回る、そんな光景が復活する日を目指しています。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 古橋保志〕

(2020年05月08日)


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