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約60日間飲まず食わずのエミューのオス
 └─ 2020/02/22

 多くの鳥はオスとメスが共同で子育てをおこないます。しかし、エミューはオスだけが子育てに関わることが知られています。野生のエミューは複数のメスが同じ場所に産卵し、卵が10個から20個ほど集まるとオスが抱卵を開始します。孵化までの期間は52日から56日とされ、約2か月間オスは飲まず食わず。雨の日も雪の日も卵をあたため続けます。孵化後、ひなの世話をするのもオスの役目です。

 多摩動物公園では現在、エミューのオスを1羽、メスを2羽飼育しています。昨年(2019年)12月から産卵が見られ、3〜4日おきに1個ずつ産み足されていきました。ただし、メスの「エヴァ」と「ワカメ」のどちらが産んでいるのかわからないままでした。

 ある日のこと、放飼場のいちばん手前のカンガルー側に卵を発見しました。観覧通路から見やすい位置なのでチャンスと思った私は、産卵記録をもとに産卵日を予想し、当日の夕方は気配を消して草陰からこっそり観察しました。その結果、ワカメが産卵していることがわかりました。

 放飼場手前での産卵が続くなか、オスの「アジット」が昨年までと同様、放飼場の奥の茂みで抱卵を始めました。ここには卵が1個しかなかったのですが、いつもの場所なので抱卵を始めてしまったのでしょう。そこで、手前の卵だけを回収して孵卵器に入れました。放飼場の奥の産卵場所には擬卵(つくり物の卵)を追加するとともに、さらに産み足されるのを待ちました。


雨の中で抱卵しているアジット

 その後順調に抱卵が続き、産み足しも見られましたが、あるとき、アジットがワカメを追いかけ、放飼場を走り回っていました。担当者が仲裁に入って落ち着かせた後、卵を確認しに行くと卵が3個割れていました。アジットはいったん抱卵をやめてしまいましたが、2日後にはふたたび卵を抱くようになりました。その後もしっかりと抱卵を続けています。このまま順調にいけば3月10日ごろにはひなの姿を見られるかもしれません。抱卵場所は放飼場に向かって左奥、隣のカンガルーに近い茂みの端あたりです。

 抱卵開始後、担当者として心配も尽きませんでしたが、なんとか抱卵予定日数である約2か月の半分が過ぎ、残り1か月となりました。静かに見守っているところです。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 高橋琉河〕

(2020年02月22日)


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