アフリカゾウは陸上でもっとも大きな動物です。もっとも長い鼻をもち、もっとも大きな耳をもち、そしてもっとも大きなウンコをする動物です。今回ご紹介するのはそんな陸上最大のウンコです。
動物園でゾウのウンコを見たことがある方も多いでしょう。1玉およそ2キロ弱もある大きなウンコです。それを1回5玉前後、1日10回ほど出します。つまり、1回約10キロ、1日約100㎏にもなります。しかし、その重さの大方は水分で、ある日、メスの「アコ」のウンコ1玉を量ると1.9キロでしたが、乾かしてみると750グラムになり、60%以上が水分でした。
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アフリカゾウのウンコの重量の変化 | 個体ごとのウンコの中身の比較 |
ゾウのウンコは大きさだけでなく、その中身も特徴的です。そこで、ウンコを洗ってみることにしました。ウンコの中は粗くて長い草がいっぱい詰まっています。そこからリンゴの皮、オレンジ、タネ、木の葉までがそのまま出てきました。
個体によってウンコにも個性があります。若い「砥夢(トム)」(オス、10歳)のウンコはまだ子どもサイズで小ぶりの1.2キロ。国内最高齢のおばあちゃん、アコ(推定54歳)のは大きく1.9キロほど。「チーキ」(メス、推定43歳)はその間、1.7キロほどでした。
それぞれウンコを洗ってみると、洗い具合に明らかな違いがありました。洗うたびにふわふわとする砥夢のウンコに対し、アコのウンコはゴワゴワしています。感触をたとえるならダウン(綿毛)とフェザー(その他の羽毛)といった感じです。砥夢のウンコの繊維は短くて細いのですが、アコのそれは砥夢の2倍ほどの長さがあり、植物の茎やオレンジがそのまま出てきています。
一方、年齢も3頭の中程で、重量も中間値だったチーキのウンコから出てくる繊維は、長さは砥夢と同じぐらいですが、太い茎も多く見られます。スモールフェザー(小さい羽毛)といったところでしょうか。3頭のウンコの違いは、咀嚼回数や消化運動の違いだろうと思われます。
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ゾウはエネルギー効率が非常に悪い動物で、食べた物の45%ほどしか消化できないといわれています。野生では他の動物が食べないような栄養価の低い植物を大量に摂取して、あの巨体を維持しています。そして、消化しにくいタネは大方がそのままの状態で排出されます。1日の移動距離は数十キロといわれるため、ゾウは大量のタネを養分や水分とともに広い大地にまいて歩いていることになります。
アフリカゾウが野生でくらしていくには膨大な量のえさが必要です。そして、ゾウたちは食べるだけではなく、耕し、タネをまき、自分たちのくらす環境を育てていると言えるでしょう。陸上最大のウンコから見えるゾウたちのふるさと、アフリカの大地にぜひ思いをはせてみてください。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 友岡梨恵〕
(2019年09月20日)