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ボルネオオランウータン「チャッピー」、次の繁殖に向けて
 └─2019/08/30

 ボルネオオランウータンの生息地であるボルネオ島の森は、数年に一度しか木々に栄養豊富な果実が実らない特殊な環境サイクルをもっています。それ以外の時期、ボルネオオランウータンたちは栄養価の低い木の葉やイチジクの実などを食べてしのぎます。

 特殊な環境の中で必要なえさを確保するために、彼らは群れで行動せず、単独生活を送ります。おとなのオスとメスが近づくのは交尾のときだけで、オス親は育児にも参加しません。母親は、こうした環境の中での生活を子どもに学ばせるため、じっくりと育児に時間をかけます。その結果、他の動物と比べて出産間隔が7~8年と長いのはボルネオオランウータンの特徴の一つです。

 多摩動物公園には現在、9頭のボルネオオランウータンがいます。このうちおとなのオス2頭は、生態に合わせて単独で飼育しています。オス以外には3組の親子がいて、そのうちの1組は代理母と子の関係です。

 2018年12月中旬、育児中のメス「チャッピー」(45歳)に、出産後初めての発情が見られました。チャッピーの発情にタイミング合わせてオスの「キュー」(推定50歳)との同居(ペアリング)を12月中旬から3月上旬にかけて行いましたが、複数回の交尾が確認できたものの、残念ながら妊娠にはいたりませんでした。


格子ごしにお見合い中のチャッピー(左)とボルネオ

 キューに対してチャッピーが拒否反応を示すようになったので、6月以降は相性のよいオス「ボルネオ」(34歳)とのペアリングを進めています。野生では発情したメスがオスに近づき交尾にいたりますが、ボルネオに対してチャッピーから近づいて行って交尾するようすを観察することができました。近くで見ていたチャッピーの子「アピ」(オス、5歳)にとってもよい学習の場になったのではないかと思います。ボルネオとチャッピーの場合、10~20分の交尾を3~4回終えるとチャッピーはボルネオから離れる行動が見られました。

 6〜7月は、チャッピーに強い発情があり、複数回の交尾が見られましたが、どうしたわけか8月は発情の状態が弱く、格子ごしに短時間の交尾が1回見られただけで、ボルネオもほとんど興味を向けることはありませんでした。

 チャッピーは死産となった1回を含め、計6回の出産を経験してきましたが、年齢を考えると次が最後の繁殖になりそうです。今後もチャッピーのようすを観察しながら取り組みを進めていきます。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 山本達也〕

(2019年08月30日)


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