多摩動物公園のオーストラリア園では、パルマワラビー、シマオイワワラビー、ケナガワラルー、アカカンガルーの4種類のカンガルーを飼育しています。いずれも母親がおなかの袋で子どもを育てる有袋類で、繁殖期には子どもが袋から顔を出しているようすを見ることができます。
多摩動物公園のパルマワラビー(けがをした個体ではありません)
4種類のうち、体がいちばん小さいのがパルマワラビーです。2019年5月、パルマワラビーの子どもが尾をかじられ、短くなっていると連絡を受けました。雑食性であるワラビーは、他の個体の傷口をなめてしまうことがあります。今回、傷のできた尾をおとなたちが舐め、子の尾は本来の約3分の2、10センチほどにまで短くなり、皮膚が大きくむけてしまっていました。体も同月齢の個体にくらべて小さく、元気もあまりありません。
体重測定中。傷が治るにつれ、元気を取り戻し、体重も増えてきました
治療にあたり、母親以外のワラビーにふたたび傷口をかじられてしまわないよう、親子2頭を別の部屋に隔離することにしました。しかしワラビーはすぐれた運動能力をもっています。そのジャンプ力とスピードで、捕獲用の網を軽々と跳び越えてしまいます。まだ小さくて元気もない子どもを捕まえることは難しくありませんが、母親の捕獲は4人がかりでおこない、なんとか隔離することができました。
傷口が小さくなり、テーピングの面積も小さくなりました
尾の傷は傷口が大きく、なかなかよくなりませんでしたが、こまめに治療を続け、1か月後にようやく回復の兆しが見えてきました。体にも余力が出てきたようで、治療の際に抵抗する力は強くなり、初診時に約300グラムだった体重も1キロまで増えました。
先日、個体識別のためマイクロチップを入れました。群れに戻る準備が着々と進んでいます。展示場で元気に跳ねる姿をご覧いただけるようになるまで、もう少しです。
〔多摩動物公園動物病院係 坪井あきほ〕
(2019年08月23日)