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ツクシガモ繁殖──すくすく育つ3羽のひなたち
 └─2019/07/26

 多摩動物公園のウォークインバードケージでは今年(2019年)、4年ぶりにツクシガモの繁殖に成功しました。繁殖までの経過とひなの成長についてご紹介します。


ツクシガモ成鳥。左:オス、右:メス

 みなさんはツクシガモをごぞんじでしょうか。白・黒・茶の羽毛に赤いくちばしをもつ非常に美しいカモです。オスの「額」にはくちばしから続く瘤があり、繁殖期に大きくなります。おもに貝など小さな軟体動物やエビなどの甲殻類、昆虫、藻類を食べています。冬になると日本にも飛来します。

 抱卵を確認したのは2019年5月22日のことでした。いつものように巣箱をチェックしているとき、母鳥が卵を抱いているところを発見しました。しかし、その後も毎日卵を抱き続けているので、「いったいいつえさと水をとっているのだろう」と不思議に思っていたのです。

 ところがある日、いつもと違う時間に巣箱のようすを見に行くと母鳥がいません。「卵を抱くのをやめてしまったか……」──そう落胆した私の視界に何か動くものが入ってきました。それは、猛スピードで走り回り、他の個体が残したえさを食べ、ガブガブと水を飲んでいる母鳥の姿でした。

 それ以降、母鳥が巣箱から出る時間に合わせて観察に訪れるようにスケジュールを調整し、ときにはペレットをそばにまいて栄養補給をさせ、母親が卵をしっかり抱き続けられるようにしました。その甲斐あって、6月22日に3羽のひなが無事孵化したのです。


孵化後6日目のひな

 ひなが安全に成長できるよう、あらかじめ孵化前に巣箱周辺をプラスティック製のネットで囲っておきました。孵化後3日目くらいでひなは親といっしょに巣箱の外に出てくるようになり、何かあるとすぐに巣箱の中に引っ込んでいましたが、わずか2日後にはひなたちだけでネットの囲いの中を平気で歩き回り、親に呼ばれると3羽そろって巣箱の中に戻るようになりました。

 ひなたちは孵化後7日目までネットの中で育ちましたが、ネット囲いの出入口を開放した後はいろいろなところを歩き回り、ときには親が見えなくなるところまで出歩いて親鳥を心配させることもありました。ひなたちの成長は目ざましく、最近は親子そろって自分のなわばりを作り、そこに入ってきた他のツクシガモやサギやガンを追い払っています。


孵化後18日目のひな

 ウォークインバードケージは多摩動物公園で唯一、人が鳥と同じ空間に入ることができる施設です。ぜひツクシガモのひなを近くで観察してみてください。すぐに大きくなってしまいますので、お早めにお越しください!

〔多摩動物公園南園飼育展示係 田口陽介〕

(2019年07月26日)


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