今年(2019年)3月、多摩動物公園のモウコノウマのオス「メロス」と「ナル」(いずれも2歳)を旧モウコノウマ舎の展示場に移しました。工事のために一時移動中のグレビーシマウマたちの隣です。
メロスとナルは「アジアの平原」にあるモウコノウマ舎の群れの中でくらしていました。しかし、通常の群れに成獣のオスは1頭しかいられないため、2歳になって性成熟を迎える2頭を別の場所へ引越しさせることになったのです。
旧モウコノウマ舎では「バチェラーグループ」と呼ばれる成獣オスの群れを公開しています。これまで「ハーン」(7歳)と「ルーカス」(3歳)の2頭しかいませんでしたが、今回の移動でオス4頭の群れになりました。
移動当日、メロスとナルが旧モウコノウマ舎へ到着すると、去年のルーカスの引越しのときと違って、先輩のハーンが思ったほど騒がず、私たちは拍子抜けしてしまいました。しかし、ハーンは新入り2頭とは面識がなかったため、同居はできるかぎり慎重に進めました。
ハーン対3頭に分かれ、争いは起こらなかった(いずれの写真も左端がハーン)
一方、ルーカスは「アジアの平原」でメロスとナルと同じ群れにいた経験があるため、お互いに憶えていたらしく、ハーン以外の3頭の同居はすんなりとすみました。ハーンと同居させるときは激しいケンカが起きないかと緊張しましたが、ハーンの圧倒的な強さのためか、ハーン対3頭という形になり、グループは真っ二つにわかれ、争いはまったく起こりませんでした。同居当初こそ、ハーンが後ろ蹴りなどで他の3頭に力を見せつけていましたが、相手からの抵抗がまったくないため、4頭の距離は徐々に近づいています。
スナッピング行動をとるルーカス(右手前)とナル(右奥)。スナッピングは子がおとなに
対して見せる行動。2頭は子どもであることをアピールし、攻撃を避けようとしている
ルーカスがここに来たとき、ハーンに脅えるようすがうかがえました。ルーカスは部屋中を歩き回り、えさを蹴散らして食べようとせず、ハーンを扉越しに見てはハーンにあいさつを繰り返していました。
しかし今回、メロスとナルはハーンが扉越しに後ろ蹴りをしても少しあいさつする程度で、そのままえさを食べ続け、部屋を歩き回ることもありませんでした。「アジアの平原」のモウコノウマ舎で2頭は母親にべったりの甘えん坊で、ちょっとしたことでも脅えるようすが見られたため、今回の移動には心配がぬぐえませんでしたが、私たちの心配とは裏腹に、メロスとナルはとても落ち着いていました。2頭いっしょの引越しだったため、互いに頼り合えたようです。メロスとナルは私たちが思っているよりも図太い性格をしているのかもしれません。
こんな新入り2頭のメロスとナルの加わったモウコノウマのバチェラーグループ。ぜひ多摩動物公園に見に来てください。
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〔多摩動物公園南園飼育展示係 下重法子・西塔香月〕
(2019年07月05日)