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3年ぶりのモモイロペリカンの繁殖
 └─ 2019/04/20

 春を迎え、多摩動物公園の植物もいよいよ芽吹き始めたころ、サバンナエリアにくらすモモイロペリカンの恋の季節もピークを迎えました。このたび、モモイロペリカンが3年ぶりの産卵と抱卵を始め、まもなく新しい命が誕生しようとしています。


お腹の下には卵があります

 繁殖期は秋ごろから始まります(詳細は2017年のこちらの記事をご覧ください)。毎年時期を迎えると、体や行動に繁殖期特有の変化が見られてはいたのですが、営巣行動までにはいたらず、産卵があったとしても、池の中や地面にそのまま産み落としまう状況でした。

 今回、ペリカンが子育ての場所に選んだのは池の中に置いた木製の巣台です。安心して育雛ができるように歴代の担当者が用意をした巣台は、十数年前から改良を重ね、今は3代目です。しかし3代目の巣台設置後、数年間は使うようすがなかなかなく、どうしたものかと思っていたのですが、ようやく日の目を見ることとなりました。3月末から産卵が始まり、現在3ペアが抱卵しています。

 産卵直前になると、数羽のペリカンが巣台に集まり、離れないようになりました。各ペアは1日おき、あるいは数日おきに卵を産み足し、4月第1週には各ペア2卵ずつとなりました。オスは巣材となる火山礫や土、草、枝などをキリン大放飼場内で見つけると、口に入れてメスのいる場所までせっせと運んできます。そして座っているメスのそばで吐き出すと、メスはくちばしでお腹の下や身体のまわりに寄せ集めます。


巣に集まってあまり離れなくなったペリカンたち。こちらを気にしている

 そんな行動が数日間、一日中繰り返されました。巣台に気に入った巣が完成すると、雌雄が交代で抱卵するようになりました。私たちは交代のタイミングを狙って、卵が2つあるかしっかり確認します。なぜなら、ここは飼育施設とはいえ野外です。しかも自然豊かな多摩動物公園の園内にはさまざまな野生動物が生息しているため、大切な卵が狙われてしまう恐れがあるからです。ふだんからおこなっている掃除や観察、給餌作業も、ペリカンを刺激しないように一段と気を使っています。順調に進むと、ゴールデンウィークが始まるころ、ひなが孵化する見込です。

 サバンナエリアでは改修工事が続いています。2017年6月以降は、グレビーシマウマもシロオリックスもダチョウもいなくなってキリンとペリカンだけになりました。少しさみしい気がしていたところです。キリンもペリカンも無事繁殖して大きな群れとなり、サバンナエリアがにぎやかになってほしいと期待しています。お立ち寄りの際はそっと静かに、あたたかく見守ってくださいね。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 齊藤美和〕

(2019年04月20日)


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