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オオコオイムシの産卵が始まりました
 └─2019/03/22

 3月になり、日ごとに暖かくなってきました。多摩動物公園の昆虫園本館1階の展示エリアでは水生昆虫の繁殖シーズンが始まりました。少し前までは水中でじっとしていることが多かったのですが、水の中で季節の変化(昼間の長さや水温の上昇)を感じ取り、えさを食べる量が増えてきています。

 いち早く動き出したのはオオコオイムシです。オオコオイムシはメスがオスの背中に産卵し、オスは卵が孵化するまでのあいだ、背中に卵を背負って生活する習性があります(コオイムシの名前の由来です)。また、卵を背負ったオスは水面の近くにいることが多く、白い卵が目立つので観察もしやすい昆虫です。

水面に波をつくってメス(左)を誘うオス(右)
交尾中の雌雄

 先日、その産卵行動も観察することができました。まず、オオコオイムシの求愛サインは、オスの作る「波」です。揺れにくい木など、しっかりした物につかまって体を固定させたオスは、中脚と後脚を屈伸させて体全体を上下に動かし、水面に波をつくってメスを誘います(写真1)。

 波を感じてオスの存在に気づいたメスは、オスに接近し交尾を始めます(写真2)。交尾後、オスは水中に潜り、メスのお尻が自分の背中に来るように誘導してから、体を左右に振るようにします。まるで「ここに産卵して」とでも言っているかのようです(写真3)。この行動が繰り返され、やがてオスの背中は卵でいっぱいになります。

オスの背中に産卵するメス
ユスリカの幼虫を捕食する1令幼虫

 水温にもよりますが、オスは卵が孵化するまで11~12日程度、水面付近で卵の世話をします。卵の世話?というと変に聞こえるかもしれませんが、卵も生きているので酸素が少ないと死んでしまいますし、乾きすぎても死んでしまいます。オスはときどき水面から卵が出るようにし、「ちょうどよい加減で」濡れ具合を調節しているように見えます。

 孵化した幼虫は体長4ミリ程度です。オオコオイムシの成虫にはコオロギなどの昆虫やモノアラガイ、サカマキガイのなかまなどを与えていますが、幼虫には小さなえさが必要です(写真4)。さいわい多摩動物公園にはいくつか水辺があり、そこで発生している生き物(ユスリカの幼虫など)を採集して幼虫に与えています。

 野外からの採集が年々むずかしくなってきている水生昆虫ですが、展示で使用する個体は飼育担当者が繁殖させて維持するように心がけています。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 橋本浩史〕

(2019年03月22日)


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