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もうすぐ10歳を迎える砥夢──牙の治療を続けています
 └─2019/03/08

 2009年3月17日に愛媛県とべ動物園で生まれた「砥夢」(とむ)は今年で10歳になります。昨年(2018年)は砥夢や私たち担当者にとって激動の一年でした。そんな砥夢の近況をお伝えします。


最近の砥夢

 何度かお知らせしたとおり、昨年2月から3月にかけて砥夢は左牙を折ってしまいました。少年から若者に成長する過程でありあまる力を柵にぶつけたためでした。みなさんにもご心配をおかけしていますが、牙の治療は継続しており、1年経った今、少しずつよい方向に進んでいます。また、牙以外はいたって健康に成長しています。

 牙の治療といってもなかなか想像できないかもしれませんが、ゾウの牙は人間でいうと第二切歯にあたり、これが一生伸び続けるつくりになっています。人間の歯と同じように牙の内部には歯髄が通っていて、牙が成長するために必要な栄養を送る血管が通っています。今回砥夢は、この歯髄が露出するところまで折ってしまったので、初めは出血もありました。

 治療のために歯髄の止血をおこなった後、露出した歯髄は毎日根気よく消毒し、新たな感染がおきないように保護カバーを装着しました。そして化膿が治まるのを待ち、最後に歯髄の穴を埋めて牙が自然に伸びて元の姿に戻るのを待つ、という治療です。イメージとしては人間の歯に開いた虫歯の穴を消毒してセメントで埋める、というのが近いかもしれません。実際、砥夢の牙の治療には人間の小児歯科のお医者さんにも助言をいただいています。人間と大きく違うのは、砥夢はせっかく治療してカバーをつけても、その日のうちにまたぶつけて牙が欠けてしまったり、土山を掘って歯髄を汚してしまったりすることでした。


「PCウォール」(プロテクテッド・コンタクト・ウォール)と呼ばれる柵を利用した治療

 そんな紆余曲折はありましたが、歯髄がきれいな状態になってきたので次の段階への準備をしているところです。人間の感覚で考えると、こうした歯の治療はすごく痛い大変な治療のように思えます。ところが、歯髄の消毒などをしていても砥夢は痛がる様子を見せず、トレーニング用の柵でおとなしく治療に協力してくれます。野生でも牙を折るゾウはいるので、いちいち痛がっていては生きていけないのかもしれませんね。

 この一年、アフリカゾウ班の仕事の大半は砥夢の牙治療が最優先でした。獣医師チームと意見を重ね、また、他園の方々の助言もいただきながら続けてきました。しかし、治療はまだまだ続きます。砥夢が協力してくれるよう信頼関係を保ちながら、一日も早く牙がよい状態に戻せるように努力していきます。みなさんもどうか末永く見守ってください。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 木崎恒男〕

(2019年03月08日)


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