多摩動物公園の「キジ・ハト舎」には、美しい羽をもつキジのなかまがいますが、美しいのはオスです。繁殖相手として選んでもらうためにオスたちは、「自分はえさも十分食べられて健康で、羽もこんなにきれいだよ!」とアピールをします。そんなキジ・ハト舎の美丈夫(美しく立派な男)たちをご紹介しましょう。
ニジキジのオス
来園者のみなさんが「きれい!」とよく声を上げるのはニジキジです。ニジキジのオスの冠羽は青緑色に光り、頭から背中にかけて光沢のある緑と赤銅色と金色をしており、翼は光沢のある青紫色です。カラフルでメタリックな、まさに虹色のキジです。オスは甲高い声で鳴きながら、メスに自分の姿を見せつけます。ニジキジはチベットからアフガニスタンにまたがるヒマラヤ山脈の高山帯でくらしており、ネパールの国鳥でもあります。
キジのオス
日本の国鳥といえばキジです。日本昔話の「桃太郎」で鬼退治のお供として登場します。オスは顔が赤く、体全体が光沢のある美しい緑色で、翼と長い尾羽は茶褐色をしており、日本らしい渋い色合いです。オスは繁殖の時期になると「ケーン」と大きな声で鳴いて縄張りを宣言し、その後両翼を広げて体に打ちつけて羽音を立てることがあります。これを「母衣打ち」(ほろうち)といいます。鬼退治に行くだけあって、勇ましいですね。キジは林や農耕地、河川敷などの開けた草地でくらしています。
パラワンコクジャクのオス
メスへのアピールが特徴的なのはパラワンコクジャクです。頭の羽が立っていて、体は美しいメタリックブルーです。メスの横に回りこんで「ジャー」と鳴きながら、尾羽と飾り羽を広げて、青く輝く目玉模様を見せてメスをさそいます。インドクジャクのように正面ではなく、横に広げるのです。パラワンコクジャクはフィリピンのパラワン島にのみ生息している貴重な鳥です。
今まで紹介してきたキジのなかまたちのメスは一様に茶色っぽい地味な姿をしています。メスは卵をあたためたり、ひなを守って育てるため、外敵に見つかりにくい地味な姿をしていることが都合がよいのです。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 佐々木真己〕
(2019年01月25日)