今年（2018年）も残すところあとわずかとなりました。私たち飼育係は動物たちの世話があるので正月も仕事です。年の瀬の雰囲気を感じることがあまりありません。しかしこの年末、スマホの中を確認してみると……ありました、一年を振り返るにふさわしい、トラたちの生き生きとした姿をおさめた、とっておきの動画たちが！　そこでさっそく厳選した動画5点をお届けしましょう。

①アルチョム、ブイとガス管の遊具に大興奮

　今年2月の撮影です。麻袋を巻いたガス管とTシャツを被せたブイをロープで吊るした遊具を与えたところ、アルチョム（オス）は大興奮しながら遊び始めました。大きな体のアルチョムですが、夢中なようすはまだまだ子どもです。

②アルチョムとアイを同居させたら……

　3月にアルチョムとアイを同居させましたが、残念な結果となりました。トラどうしの攻防は物凄い迫力です。アイはオスのいない環境で育ってきたため、それがオスをうまく受け入れられない原因かもしれません。アルチョムも若さのせいもあるのか、怒り狂っているアイに対してまったく引こうとしないのは紳士的ではありません。言うまでもなくすぐに2頭を離し、屋外での同居は断念しました。

③シズカの入浴シーン

　これは7月の撮影です。トラはネコ科としては珍しく、水浴をして涼をとる動物です。気温上昇時には室内に浴槽を設置し、清掃のときに新しい水を張ります。張りなおした冷たい水に入ってウットリするシズカがなんとも気持ちよさそうです。近年は酷暑が続いていますから、寒い地方に棲息するアムールトラにはつらい気候のはずです。入れたての冷え冷えのお風呂は、トラたちにとっての小さな楽しみになっているはずです。

④鹿足肉を立ち食い

　10月に撮影しました。骨や筋、腱などがそのままついた鹿足肉が定期的に手に入るようになったので、ロープで吊した鹿足肉を食べる姿を週末に公開しています。もちろん野生のトラは立って食事などしませんが、トラの特徴である大きな爪や牙がよく観察できますし、トラにとってはいい運動になります（実施は不定期です）。

⑤馬肉が出なくてイライラ

　宙吊りにした穴開きブイに馬肉片が入っています。ゆすったり傾けたりすれば簡単に肉は出ますが、トラにとっては結構な難題なのです。これはまだ始めたばかりの10月末に撮影した動画ですが、食い意地の張ったアイは肉がすぐに食べられないことにイライラしています。そこに気の入らない飼育係の一言で……。もちろん言葉を理解はできませんが、声の響きで伝わるのでしょう。

　──以上、2018年のアムールトラお宝動画大放出でした。

　今年一年、多摩動物公園へご来園いただいたみなさま、ほんとうにありがとうございました。もう何年も行っていない、行ったことがないという方も、じっくり動物を見ていると、思いもよらない楽しい瞬間が生で見られるかもしれませんよ。動画と実際の動物では迫力も段違いです。ぜひ足をお運びください。来年も多摩動物公園をよろしくお願いいたします。

〔多摩動物公園南園飼育展示係　熊谷岳〕

（2018年12月28日）