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アカガシラカラスバトの新ペアからひなが巣立ちました
 └─2018/12/14

 アカガシラカラスバトは小笠原諸島にのみ生息する絶滅危惧種です。多摩動物公園で飼育している19羽のうち、みずからひなを育てる「自然育雛」ペアは2016年にできた1組しかいませんでした。自然育雛ペアを作ることは難しいのは他の飼育施設でも変わらず、国内で飼育されている49羽の多くが人の手で育てられた個体です。

 たいていの場合、親が抱卵を途中でやめてしまい、育雛にいたりません。そこで、親の代わりに人が卵を温め、ひなを育ててきました。そうなってしまう原因は不明ですが、私たちは自然育雛を目指し、必要な環境条件を明らかにすべく、日々奮闘しています。

 そもそも、なぜ親に育てさせることが重要なのでしょうか。現在アカガシラカラスバトは小笠原現地の方々の活動によって徐々に数が増えていますが、万が一の事態が発生してしまった場合には、飼育下の個体を野生に戻す必要性が生じるかもしれません。そうした状況に備えて、野生下でも自力でひなを育てられるようにしておくことはとても重要です。

 今回紹介するペアは、6羽を群れで飼育する中で自然にペアになりました。しかし、ケージ内で産卵はするものの、同居個体を警戒して落ち着くことができず、やはり途中で卵を温めなくなってしまいました。

初めて生存を確認(6日齢)
初めての体重測定(12日齢)
2回目の体重検査(21日齢)

 そこで、他のアカガシラカラスバトがいないケージへこのペアを移し、ようすを見ることにしました。移動させると、慣れない環境のせいかペア行動をしなくなることもありますが、今回はすぐ隣のケージへの移動ということもあり、すぐに交尾も観察され、お互いに羽づくろいをするようすが見られました。その後、産卵が見られ、オスとメスが順調に交代で卵を温め続けました。そして、卵を確認してから18日後に巣の外で卵殻が見つかったのです。

 親はひなが孵化すると卵殻を巣の外へ捨てにいく習性があります。すぐに巣を覗きたいところでしたが、このペアにとっては育雛も初めての経験です。なるべく親を刺激しないよう、巣の周辺には近づかないようにして経過を見守りました。

順調に成長しています(21日齢)
巣立ちの後(29日齢)

 その1週間後、ついに中を覗いてひなの姿を確認しました。育雛は順調に続き、11月5日に無事巣立ちました。これで自然繁殖できるペアの2例目が多摩動物公園で誕生したことになります。今後もペアに合わせて自然育雛しやすい環境を工夫していきます。

〔多摩動物公園野生生物保全センター 阿尾佳美〕

(2018年12月14日)



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