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ムフロンのツノはどうやって伸びる?
 └─2018/11/16


りっぱなツノをもつオス成獣

 野生のヒツジのなかまの中では、もっとも小さな体のムフロン。オスの頭には、小柄な体格には釣り合わないほどの、大きくてぐるりと曲がった2本のツノが生えています。まるでアンモナイトの化石のようなこのツノは、いつごろ生えてきて、どんなふうに伸びていくのでしょうか。

生まれたてのムフロンにはツノがありません
ツノが生えてきた!(生後62日目)

 ムフロンのオスには大きくりっぱなツノが生えますが、メスにはツノが生えません。オスたちは繁殖期になると大きなツノをぶつけ合い、メスをめぐって力比べを日々繰り広げます。ただし、誕生直後のオスの子には必要がありませんし、また、生まれるときに邪魔になるので、赤ちゃんにツノはもちろん生えていません。

生後半年。初めての冬を迎えてツノの成長は一休み
生後1年半。まだまだ成長中

 オスの子を観察していると、どの個体も生後1か月〜1か月半ごろツノが生えてくるようです。最初は小指の先ほどの小さなツノですが、日に日に大きく成長していきます。ところが、不思議なことに冬を迎える生後半年を過ぎたころ、ツノの成長がピタッと止まってしまいます。もしかすると、私たちの体が指先から冷えていくように、ツノの先から体温が奪われるのを防いでいるのかもしれません。そして、春が近づく生後11か月ごろになると、思い出したかのように急激にツノが伸び始めます。

 なんとも不思議なこのツノは根元から押し上げられるようにして、後方に円を描きながら伸びていきます。そのため、ツノの表面には、たくさんの層や節のようなものが観察できます。このツノはりっぱに成長するまでに約3年かかることもあり、抜け落ちることはなく、生え換わることもありません。

 多摩動物公園では現在、生後約1年半のオス「ナポ」と生後約半年のオス「レオン」のツノが成長中です。ツノの大きさの違いやこれからの成長に注目してみると面白い発見と思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 山本達也〕

(2018年11月16日)


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