多摩動物公園では、ニホンノウサギの亜種であるトウホクノウサギを飼育しています。2018年4月に子どもが生まれ、多摩動物公園ではじつに20年ぶりの繁殖となりました。
子どもは順調に成長し、おとなとほとんど変わらないほどの大きさにまでなったところだったのですが、2018年8月に左の後肢の向きがおかしいと動物病院に連絡がありました。すぐにノウサギ舎へ個体の状態を確認に行き、子どもがいる巣箱の中をそっと覗くと、たしかに左後肢の足首から先が通常よりも内側に回転しているのがわかりました。骨折か脱臼の可能性が高いと考えられたため、すぐに小さな箱に移して病院へ運びました。
病院に連れてきてすぐに麻酔をかけました。トウホクノウサギは非常に神経質なうえに脚の力が強いため、捕まえて人の手で押さえようとすると暴れて余計にケガをするリスクがあります。簡単な処置でも押さえることは危険なため麻酔が必須なのです。
麻酔をかけてレントゲンを撮るところ
後肢のレントゲンを撮ると、すねの骨である脛骨の足首側の一部が折れていることがわかりました。幸いにも折れた骨は皮膚の外には出ていなかったため、大きな手術をせず外から固定するだけでよさそうでした。
何を使って固定するか迷いましたが、脚の力が強いことも考え、ギプスでしっかり固定することにしました。骨折が治るまでは定期的に経過を見なければならないため動物病院で入院させることにしました。
通常、おとなのウサギは骨折が治るのに2~3か月かかり、約1か月おきにレントゲンを撮って骨の治り具合を確認する必要があります。しかしこの個体は若く、治りが早いことが予想できたので、最初の治療から2週間経ったところで再び麻酔をかけてレントゲン検査をおこなった結果、順調に骨が癒合してきていることが確認できました。
レントゲン写真。左:骨折した日、右:治療開始後1か月後(丸で囲った部分が骨折箇所)
さらに2週間後、再び麻酔をかけて患部を確認しました。骨はしっかりくっついて治っていたので、ギプスをはずして退院させました。現在ノウサギ展示場のバックヤードでリハビリ中です。長期間ギプスを装着していると足首の関節が硬くなってしまい、歩行に障害が出てしまうことが心配でしたが、そのようなことはありませんでした。展示場に出られる日も近いと思います。
裏のケージでリハビリ中
〔多摩動物公園動物病院係 吉本悠人〕
(2018年11月02日)