だんだん涼しい日が増え、過ごしやすい気候になってきました。食欲の秋、動物たちの食欲も冬に向けて増しているように感じます。そんな中、多摩動物公園にはダイエットに挑戦している2頭がいます。2015年に上野動物園から来園したツキノワグマの「ソウ」と「タロコ」です。
ダイエットを始めるきっかけはタロコの脱毛でした。多摩に来園後、タロコが体を掻くことが目立つようになり、顔や背中部分に脱毛が見られました。アレルギーやカビなどを疑い、えさを変えてみたり投薬を試みたりしましたが、状況は好転しなかったため、獣医師と相談のうえ、今年(2018年)5月、脱毛の原因を調べるためにタロコに麻酔をかけ、採血や脱毛箇所の皮膚や毛の採取、体重測定などをおこないました。
検査の結果、アレルギーやカビは確認されませんでしたが、血液検査で中性脂肪やリン脂質など、肥満に関する項目に高い値が見られました。肥満が皮膚疾患に関わっている可能性もあります。そこで、同じような体型のソウも含め、獣医と協力してダイエットに取り組むことにしました。
ニンジンを食べるツキノワグマのソウ
まず取り組んだのは、えさの見直しです。一日のえさの総カロリーを計算すると約5,000kcalだったため、上野での給餌量も参考にし、約3,500kcalまで減らしたうえで、果物とクマ用人工飼料が中心だった従来のえさメニューに野菜を増やそうと考えました。
しかし、キャベツや小松菜を与えても食べず、ナス、かぼちゃ、ズッキーニなどいろいろな野菜を試しましたが、ニンジンとトマト以外は一口も食べずに残っていました。野菜の切り方を変えたり、好きなものと混ぜたり、蜂蜜を塗ったり、さまざまな方法を試しましたが食べることはありませんでした。
おから団子でダイエット。写真はソウ
ところがあるとき、おからが低カロリーだとアドバイスをもらったので与えてみたところ、よく食べました。そこで、おからに刻んだキャベツなどの野菜と水、少量の人工飼料を混ぜ、団子にして与えることにしました。すると、いままで一切食べなかったキャベツや小松菜もおからといっしょに食べるようになったのです。今後は人工飼料やおからの量を少しずつ減らし、野菜をそのまま食べるようになるよう、給餌方法の工夫を進めます。
ダイエットを開始して4か月、ソウはやせてきたようなのですが、ソウに比べるとタロコはやせるペースがゆっくりな印象です。ただし、見た目だけの判断ではなく、体重測定や血液検査を無麻酔でおこえるようにして、結果を数値化する計画です。ダイエットに励む2頭をぜひ応援に来てください。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 齋藤友樹〕
(2018年09月28日)