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鳥たちの「衣替え」、換羽の話
 └─2018/08/31

 日本の多くの地域で約1か月後には衣替えの季節を迎えますが、鳥たちの衣替え(?)についてお伝えします。

 多摩動物公園のアジア園にある「ウォークインバードケージ」は通り抜け式の大型ケージです。中ではクロツラヘラサギやツクシガモ、オシドリ、クジャク、ニホンコウノトリなど、さまざまな鳥たちを間近で観察することができます。

換羽中のオシドリのオス
ケージ内で見つけたツクシガモの羽

 ケージ内に鳥の羽がたくさん落ちている時期があります。落ちた羽を見て「ちゃんと掃除をしていないのでは?」と思われるかもしれませんが、掃除をさぼっているわけではありません。“換羽”と呼ばれる鳥の生態と深い関わりがあるのです。

 換羽とは、古くなった羽が抜け落ち、新しい羽に生え変わる生理現象です。一般に年1回以上おこなわれ、鳥の種類や年齢、性別などによって生え替わり方が決まっています。

 風切羽(翼の羽)の換羽は左右対称に進んでいきます。初列風切(翼の中でも先端の方の丈夫な羽)は、通常内側から外側へ向かって順に抜け落ち、生え変わっていきます。このとき、多くの種では飛翔能力が低下しない程度に羽が抜け、初列風切が数枚伸びきったところで、次列風切が外側から内側へ向かって換羽を始めます。

 一方、ガンカモ目やツル目の鳥では、風切羽がいっせいに抜けて生え変わり、飛べなくなる時期があります。飛ばなくても支障がない場合、いっせいに換羽すればその期間を短縮できるメリットがあると考えられています。

 ウォークインバードケージでは、オシドリのオスが見せる夏羽と冬羽の違いがわかりやすいと思います(カモ類ではそれぞれ非生殖羽と生殖羽と呼びます。オシドリの換羽については、過去の記事「オシドリの『エクリプス』」をご覧ください)。


拾った羽は日付を記録し、ケージごとに整理・保管しています

 換羽の時期になると鳥たちの羽がいっせいに抜け始め、掃除をしても次の日にはたくさんたまっているというわけです。飼育係は羽をただ掃除してしまうのではなく、毎日採集して保管し、日々の換羽状況、年ごとの変化、展示資料としての活用など、さまざまなかたちで活かしています。

 ウォークインバードケージでは換羽以外にも産卵や抱卵、育雛など、鳥たちの多様な生態を一年中、間近で観察することができます。ぜひ多摩動物公園で鳥たちの行動や生態を観察してみてください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 長島拓志〕

(2018年08月31日)


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