連日暑い日が続きますが、多くの動物たちにとってもこの暑さがつらい季節です。とくに、本来の生息地が東京よりも寒い地域にある動物たちは暑さに弱いため、さまざまな工夫をしながら飼育しています。
北極圏で繁殖するシロフクロウもそんな動物の一種です。例年5~6月ごろ産卵するのですが、抱卵の時期やひなが孵化して間もないころ、東京では梅雨や夏にあたるため、暑さと湿気が大きな問題でした。そこでこれまでさまざまな対策を実施してきました。
まず、抱卵中のメスは巣からほとんど動くことがないため、吹き込んだ雨で体や巣内が濡れて汚れ、さらに暑さと湿気で体力が落ちてしまい、体にハエの幼虫が寄生していたことさえありました。そこで、抱卵環境の改善に取り組みました。シロフクロウは地面に巣を作るため、雨対策として、水はけのよい川砂と粒の大きい富士砂を混ぜてケージ内に敷きました。また、外から吹き込む雨を防ぐためにビニールシートを張りましたが、晴れの日は風通しをよくするため開閉できるようにしました。また、抱卵中のメスは警戒心が強く、攻撃性が高くなるため、なかなか掃除ができません。そこで、残すえさの量が最小限になるよう、与える量を臨機応変に変えました。
また、体力のまだないひなは、カビ性肺炎になることがしばしばありました。そこで、暑さと湿気対策として、扇風機やスポットクーラーを設置しました。また、強い日差しを防ぐために日よけをつけ、目隠しの板を風通しのよい寒冷沙に変え、とくに暑い日は打ち水をして氷の入った容器を置くなど、屋外のケージで少しでも涼しく過ごせるようにしました。
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凍らせた容器の上にのるひな (2015年8月11日撮影) | 扇風機の風にあたる今年生まれのひな (2018年7月25撮影) |
しかし、繁殖がうまくいく年もあればそうでないこともあり、根本的な解決にはいたっていませんでした。そこで、先輩からのアドバイスをもとに、照明で人工的に日長をコントロールし、産卵時期を早める取り組みを2年前から始めました。最初の年は照明の点灯スケジュールが合わなかったのか、産卵にいたりませんでしたが、昨年と今年(2017年と2018年)は例年より1か月以上早く4月上旬に産卵し、5月にはひなが孵化しました。その結果、梅雨前にはひなが巣立ち、自分で雨のあたらない場所や涼しい場所を選べるようになりました。
これからも厳しい暑さが見込まれますが、ひなはすでにほとんど親と同じ大きさにまで育ち、水浴びもしており、今までよりも安心して見ることができています。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 中島亜美〕
(2018年08月03日)