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モウコノウマ、初の「バチェラーグループ」
 └─2018/07/13

 多摩動物公園の旧モウコノウマ舎では長い間、オスの「ハーン」が1頭でくらしていました。ここに「アジアの平原」のモウコノウマ舎にいたオスの「ルーカス」が引っ越してきたのは2018年3月31日のことです。群れには通常、成熟したオスは1頭しかいられません。そこで、4月で2歳を迎えるルーカスが性成熟する前に、群れから移動させなければなりませんでした。

 野生のモウコノウマも2~3歳を迎えると性成熟を迎え、オスは群れを離れます。その後、1頭で放浪するものもいますが、オスの群れである「バチェラーグループ」を作って生活することが知られています。そこで、ハーンとルーカスもいっしょに生活できるのではないかと考え、モウコノウマの飼育の歴史の長い多摩動物公園でも初となるバチェラーグループを作ることにしました。

ルーカスの引っ越し。輸送箱で移動
扉越しにお見合い中のルーカス。
金網の向こうにハーンが見える

 引っ越し後、ルーカスが環境に慣れるのを待ち、5月9日にハーンと同居させました。最初はハーンが攻撃的で、見ていてヒヤヒヤさせられました。ルーカスは地面にしりもちをつくようにして座り込み、まさに腰を抜かした姿勢のまま、「スナッピング」、つまり子馬がおとなの馬に対して歯をカチカチと鳴らす行動を始め、自分が子どもであることを必死にアピールしていました。ルーカスの幼さと一貫した低姿勢のおかげか、最終的にはハーンも落ち着き、何とか一段落がつきました。

 初の試みで心配も多々ありましたが、2頭は今、いつもいっしょに行動する仲良しです。そして意外なことに、あれだけ攻撃的だったハーンのほうがルーカスにつきまとうようになりました。1頭の時は独り遊びをよくしていたハーンは、遊び相手ができて嬉しそうに見えます。また、「アジアの平原」で子馬どうしが見せる後ろ肢を噛む行動や、相手に後ろから乗りかかるマウント行動、ルーカスに体をぴったりとくっつけたまま並んで歩く行動など、さまざまな行動が見られ、ハーンはとても楽しんでいるようです。

同居して間もない2頭。距離を置いている
日が経つと2頭の関係は落ち着きました

 一方、ルーカスは「アジアの平原」では他の子馬といっしょに遊んでいましたが、相手が成獣のハーンとなると、初めは悲鳴のような声を上げ、恐がっていました。しかし、今ではハーンに攻撃する気がないとわかったようで、軽くあしらう余裕が出てきました。

 2頭の行動や関係性など、ぜひ多摩動物公園初のバチェラーグループに注目してください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 下重法子・西塔香月〕

(2018年07月13日)


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