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20年ぶりに育ったトウホクノウサギ
 └─2018/06/22

 みなさんはウサギと言われて想像するのはどんなウサギですか? 目が赤くておとなしいウサギでしょうか。今回ご紹介するのは、家畜化されたカイウサギ(rabbit)ではなく、日本の野山でくらすノウサギ(hare)です。

 多摩動物公園では、ニホンノウサギの亜種であるトウホクノウサギとキュウシュウノウサギ、ユキウサギの亜種であるエゾユキウサギを飼育しています。その中のトウホクノウサギが2018年4月23日に出産しました。親と同じ展示場にいた子どもは、最初はなかなか来園者の方からよく見える場所にいることが少なく、姿を見かける回数が増えたころには、すでにずいぶんと成長していました。多摩動物公園で誕生したトウホクノウサギが生後1か月以上育ったのは、じつに29年ぶりです。


生後4日目の子ども2頭

 親となる雌雄を同居させたのは2018年3月7日です。白い毛が茶色く変わり始める頃がよいと聞いていたので頃合いを見て同居させたところ、相性がよかったのか出会って約10分で交尾しました。トウホクノウサギの妊娠期間は42~43日とされているので、予定日である4月18〜19日に向けて準備をしていたところ、47日目の4月23日に2頭が生まれました。

 ノウサギは生まれたときから目は開き、毛も生えていて、約1時間後には走ることができます。誕生の翌日、2頭の体重を測ったところ、118グラムと144グラムでした。およそ片手に乗るくらいの大きさです(1頭は残念ながら生後10日目で死亡しました)。

切り株に乗る親子
警戒する親子。左が子ども

 授乳は夜間のみにおこなわれ、それ以外は母子別々に過ごしているため、日中いっしょにいるようすはなかなか見ることができません。親子がいっしょにいるのを私が初めて観察できたのは、誕生から1か月後の5月23日の夕方、園路側にある切り株に座る母親の隣に並んで座っているところでした。人の気配に気づいた母親が奥の部屋に逃げようとすると、子どもも後をついて走っていきました。

 ノウサギは生後5日で離乳できると言われていますが、たしかに今回、生後1週間ほどでタンポポの葉を食べ始めるなど、固形物の採食を確認することができました。現在、体重は1.7キロですが、見た目はおとなとほとんど変わらない大きさにまで成長しました(おとなは約2.5キロ)。

 じつは園内にも野生のノウサギがくらしていますが、姿を目にする機会は多くありません。ぜひ飼育している親子をご覧ください。この記事をきっかけに、ウサギ(rabbit)だけではなく、ノウサギ(hare)にも注目していただけると担当者としても嬉しく思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 河本彩花〕

(2018年06月22日)



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