多摩動物公園のモルモットのふれあいコーナーは、ときには整理券が午前中になくなるほど大人気のスポットです。モルモットたちは元気そうに動き回っていますが、最近尿石症になってしまう個体がちらほら見られるようになりました。
モルモットはもともと尿の中にカルシウムを多く含み、他の動物よりも尿石ができやすい体質です。尿石の大きさが大きくなると尿道をふさいで尿が出にくくなってしまい、膀胱炎や腎炎といった病気を併発し、死に至ることもあります。そのため、尿石症は早めの処置が必要となる病気でもあります。
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尿石のできた最初のメス | レントゲン画像。 丸く囲んだ部分に尿石が見られます |
写真のモルモット(メス)は尿道の出口に尿石が詰まってしまいました。尿石は尿管、膀胱、尿道など、さまざまな部位にでき、尿管や膀胱にできてしまうとお腹を開いて取り出す必要があります。写真のモルモットの尿石は、幸いなことに尿道の出口に詰まっていたため、お腹を開かずにすみました。尿道の出口から局所麻酔薬のゼリーを潤滑剤として入れ、軽く尿石を押し出し、鉗子(かんし:はさみ型のピンセットのような器具)でつまんで取り出すことができました。
取り出した尿石。直径約15ミリもありました
しかし、別のモルモット(メス)では石が大きすぎてそのまま尿道の出口からつまみ出すことができませんでした。そこで尿道の出口を少し切り開き、出口を広げて取り出しました。取り出した尿石はモルモットにとってはとても大きかったため尿道が腫れてしまい、しばらくは尿が出にくかったり食欲が低下したり、元気を失っていました。しかし、2週間ほどで食欲も戻り、1か月後には群れに戻って他の個体といっしょに元気に動き回るようすが見られたので一安心しました。
尿石症の原因は、栄養バランスの乱れ、飲水量の低下、細菌感染など色々考えられますが、今回の2匹については飲水量の低下ではないかと考えています。えさとして干し草やペレットなど乾燥したものが多かったため、水分が不足しがちになっていた可能性があります。そこで対策として、青草などの水分の多いえさを与え、水分を補うことにしました。この対策により尿石症が減っていくことを期待しています。
〔多摩動物公園動物病院係 戸田光亮〕
(2018年05月25日)