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春になって、アオダイショウが……
 └─2018/04/13

 爬虫類は、鳥類や哺乳類のように代謝によって体内で熱を産み出す「内温性」の動物ではなく、日光や水、空気、土など、外環境要因から活動のためのエネルギーを得ている「外温性」の動物です。

 羽毛や毛皮、体脂肪などは周辺環境に対する断熱材として働き、鳥類や哺乳類など内温性の動物にとっては有利な構造です。しかし、ヘビなどの外温性の動物は、太陽光など環境要因から熱を得るので、そうした断熱材はエネルギー代謝にとって逆効果です。そのため、体に断熱材をもたないヘビのなかまは、活動に適した体温を保つ方法として生理的機能や行動習性を利用します。

 多摩動物公園では2008年4月から、ウォークインバードケージの出口側の一角でアオダイショウを展示しています。展示水槽は、雨はしのげても外気にはさらされる場所に設置されています。

 展示しているアオダイショウは近隣で保護された個体なので、ヒーターなどで加温しなくても飼育できると思われるかもしれませんが、幅1メートルほどの狭い展示槽内では、真冬に氷点下まで冷え込むと、ヘビが選べる適温の環境がなくなってしまう可能性があります。そこで、2017年以前は冬のあいだずっとパネルヒーターで加温していました。

 しかし、外気の影響を強く受ける環境の場合、中途半端な加温だとアオダイショウの体内の代謝を乱すのではないか、と考えました。また、外気温の低下に合わせて冬眠すれば、繁殖や寿命などのライフサイクルによい影響を与えるだろうと判断しました。


 そこで2017年から2018年の冬を迎えるに当たり、展示槽内の底土の上にコナラなどの落葉を十分敷き詰め、気温と地温を毎日チェックし、0℃以下になった場合に備えました。2018年1月下旬、多摩動物公園周辺の気温が気象庁の観測値で氷点下8℃以下になり、展示槽内の地温も0℃以下を示したため、それ以降は展示水槽下の空間を暖め、地温が最低でも1.5℃程度になるよう調整しました。

 2017年10月からえさを食べなくなったアオダイショウは、徐々に冬眠状態に入ったと思われます。そして、寒い冬を乗り越え、展示槽内の気温が14.5℃、地中約5センチの温度が15.5℃と暖かくなった2018年3月28日、落ち葉の下から姿を現しました。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 由村泰雄〕

(2018年04月13日)


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