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陰の立役者、チンパンジーの「デッキー」
 └─2018/03/30

 2017年4月から1年間、多摩動物公園のチンパンジーに関して、「サクラ」(メス、8歳)の群れ入りや、新入り「ケイ」(メス、37歳)が施設へ馴れるための奮闘のようすをご紹介してきました。そんなサクラとケイを陰で支えてくれたチンパンジー「デッキー」(オス、40歳)についてお伝えします。

 デッキーはとても無邪気で寛容な性格です。他のおとなのチンパンジーに比べ、子どもと遊ぶことが多く、いつも楽しそうな表情を見せています。また、オスは他の個体に食べ物を奪われても取り返そうとしないのですが、デッキーはねだられると自分が好きなものでも渡してしまうことがあります。デッキーのこの寛容な性格がサクラとケイを支えることになりました。


フブキ(オス、4歳)と遊ぶデッキー

 サクラを群れに入れるための練習をしているときも、デッキーはサクラをよく助けてくれます。他の個体がサクラに攻撃をしかけると、デッキーはサクラのそばに寄って来ることが多く、ときには攻撃してきた相手に反撃することもあります。デッキーはサクラの他にも仲のよい個体がいますが、そうした個体とサクラの間でケンカが発生しても、サクラに手を出すことはほとんどありません。

 サクラもデッキーを強く信頼しているようで、トラブルが発生すると真っ先にデッキーのそばに移動します。この信頼関係のもと、今では昔から多摩にいたのではないかと飼育係が錯覚するほど、サクラは群れになじんで過ごしています。

サクラ(左)とデッキー
ケイ(奥)とデッキー

 また、ケイは長い間、他のチンパンジーとの関わりをもつことがなく、コミュニケーションがうまくとれませんでした。そんなケイの行動の幅を広げてくれたのもデッキーでした。デッキーはケイと初めて同居したときから、攻撃的な態度をとることなく、毛づくろいをするほど友好的に接してくれました。ケイがしだいにデッキーに慣れてくると、ケイの方からデッキーを遊びに誘い、デッキーも反応して「笑顔」を見せながら遊ぶ場面も見られるようになりました。毛づくろいや遊びはチンパンジーにとってごく一般的な行動ですが、ケイにとっては非常に新鮮な体験だったと思います。

 このようにデッキーのすごさは、力で支配するのではなく寛容な心でサクラとケイを支える優しさにあります。これからもデッキーの存在が2頭の力になっていくと信じています。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 佐藤澄音〕     

(2018年03月30日)


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