みなさんはスバールバルライチョウをご存じでしょうか? ライチョウ類はキジ目キジ科ライチョウ亜科に属するグループで、6属16種に分類され、北半球の寒帯から亜寒帯にかけて生息しています。
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スバールバルライチョウのオス (夏羽から冬羽に換わる途中) | スバールバルライチョウのメス(冬羽) |
スバールバルライチョウがおもにくらしているノルウェーのスバールバル諸島は、北極圏に位置し、樹林がなく、土地の8割が氷河か山岳です。ここでスバールバルライチョウはわずかに生える植物を食べています。天敵はキツネやカモメです。
東京の動物園では上野動物園で飼育展示をしていますが、じつは多摩動物公園でも飼育しています(展示はしていません)。動物園でなぜスバールバルライチョウを飼育しているのでしょう?
それは絶滅の危機に瀕している日本のライチョウを救うためです。日本中部地方の高山地帯に生息しているライチョウは近年、環境の変化により絶滅の危険が増大しており、環境省のレッドデータブックでは「絶滅危惧種IB類」に指定されています。
この日本のライチョウを守るために、さまざまな取組みが進められています。動物園でもライチョウを飼育して増やす計画が立てられ、まずは生息状況の安定している外国産亜種で繁殖などの技術確立を目指すことになりました。
2008年、上野動物園がノルウェーからスバールバルライチョウの卵を譲り受けて増やしました。しかし、1ヵ所だけで飼育していると感染症などによって全滅してしまう危険があるため、2010年に多摩動物公園では上野動物園で増えた鳥(まずはオス2羽)を受け入れました。
飼育には冷房が必要です。また、衛生面も考慮し、カワウソ舎の裏にある部屋でケージを使って飼育しています。光は窓からの自然光と人工照明を利用し、人工照明は生息地の明暗のタイミングに合わせてタイマーで点灯と消灯をしています。
えさはウサギ用のペレットと小松菜が主で、ときどきミールワームや季節の野草を与えています。2つのケージを連結させ、一方のケージにはえさや水飲みを置き、もう一方は砂を敷き詰めて砂浴びができるようにしています。
こうして裏の部屋でスバールバルライチョウを飼育し、繁殖のための雌雄ペアの観察や産卵等を観察し、さまざまなデータを記録しています。最近、ライチョウのえさの改善のために、他の動物園や大学の研究室と共同で飼料試験もおこなっています。
現在、多摩動物公園のスバールバルライチョウはオス2羽、メス3羽。日本のライチョウが絶滅しないようにするため、スバールバルライチョウも裏方さんとして、日々がんばっているのです。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 佐々木真己〕
(2018年01月27日)