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おじいちゃんフラミンゴの生い立ち
 └─2018/01/05

 現在、多摩動物公園では166羽のオオフラミンゴ(ヨーロッパフラミンゴ)を飼育しています。その中に、今月59歳以上になるおじいちゃんフラミンゴがいます(以下、敬意をこめて「長老」と呼びます)。長老は、上野動物園で38年飼育され、多摩動物公園に移って21年飼育されています。生い立ちとこれまでをご紹介します。


上野動物園にアフリカ生態園があった頃のフラミンゴ舎

 上野動物園では1933年にフラミンゴが初来園したという記録がありますが、その後いったん飼育歴は途切れ、今に続く本格的な飼育が始まったのは1958年のことです。その翌年1959年の1月、フラミンゴ導入の第2弾として、長老を含む8羽(うち6羽は別種のコフラミンゴ)がインドからやってきました。ちょうどアフリカ生態園(今の上野動物園西園の大部分を占めていたエリア)が完成した頃です。

 当時の日誌を見てみると、栄養状態が悪く、とても寒そうに震えていたため、舎内におがくずを敷き、保温灯をつけたとの記載がありました。今ではフラミンゴ用に配合された固形飼料を使用していますが、当時そのようなものはなく、エビやしらす干し、魚粉、ときにはゴカイを与えてみるなど試行錯誤していたようです。


多摩動物公園に今のフラミンゴ舎がオープンした頃

 一方、多摩動物公園では1966年からフラミンゴを飼育していますが、オオフラミンゴの飼育は現在のフラミンゴ舎ができた1997年からで、長老はこのとき上野動物園から他22羽とともに多摩動物公園にやってきました。

 長老は多摩動物公園で6羽のひなを残しています。2014年には51歳年下のメスとペアになり、繁殖しています。しかし、現在は両眼の視力が落ち、繁殖行動は見られなくなりました。

 今回の記事を書くにあたって過去の日誌や資料を読み返しましたが、特記されるような目立った功績もなければ、ケガなどの治療歴も見あたりませんでした。刻々と変化する環境の中、静かに59年を過ごしてきたようです。しかし、今では毎年敬老の日になると長寿動物として紹介され、飼育数の多いフラミンゴには珍しくファンもいる個体です。1日2回のえさの時間には、飼育係が餌場まで誘導し、十分に食べるまで見守っています。また、現在の日誌には長老の観察記録を毎日つけています。

 やや動きに衰えは出ていますが、食欲もあり、羽色もきれいです。上野、多摩のフラミンゴの飼育の歴史とともにこれからも元気に長生きできるようサポートを続けていきます。また、長老以外の165羽の中から“将来の長老”が複数現れるよう、しっかりと個々の管理を続けていきたいと思っています。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 友岡梨恵〕

(2018年01月05日)

現在、右足に「緑20」の足環をつけている「長老」。飼育職員の間では「緑父さん」の愛称で親しまれています



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