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タテハモドキ飼育の工夫
 └─2017/10/27

 多摩動物公園の昆虫生態園では、一年中約20種類のチョウを飼育展示しています。一年いつでも、すべてのチョウを見ていただきたいと思っているのですが、季節の変わり目や冬場など、幼虫がうまく育たなかったり、成虫があまり卵を産んでくれなかったりして展示できない種が出てしまうこともあります。

 また、夏場はせっかく成虫が羽化しても生態園内の暑さで弱って寿命が短くなってしまうこともあり、チョウの飼育担当者は一年中緊張感をもって飼育に取り組んでいます。

写真1:タテハモドキ成虫
写真2:蜜皿に集まるタテハモドキ

 さて、私の担当するチョウの中でもタテハモドキは例年秋口になると幼虫がうまく育たず、成虫の数が少なくなってしまう年が多いチョウです。最近5年を振り返っても、秋の羽化数の落ち込みは顕著です。目玉模様が美しく、ファンも多いチョウなので、何とか成虫を増やせないかと担当になってから2年間、いろいろと工夫してみました。

 まず、よい状態の食草を与えるために食草畑の土壌を改良しました。土が固くなっていたので、掘り起こして腐葉土と肥料を混ぜ込み、さらに培養土も加えてみました。また、若令幼虫には柔らかくて食べやすそうな葉を与えてみました。乾燥が厳しい季節には、飼育ケースにビニールをかぶせて湿度を保ち、食草がしおれてしまわないようにしました。また、成虫の栄養状態も大切なので、ハチミツをちょっとお値段の高い上等なものに変えてみました。ハチミツは結果が分かりやすく、飲みにくるチョウの数が明らかに増えました(写真2)。

写真3:タテハモドキ幼虫
写真4:タテハモドキの集団

 こうした工夫のうちのどれが利いたかわからないのですが、今年(2017年)は10月中旬まで順調に幼虫を飼育し、多くの成虫を羽化させることができました。とくに昆虫生態園大温室の芝生の広場では多くの成虫が翅を広げて休んだり(写真4)、テリトリーを守るために他個体を追いかけ回したりするようすがよく観察できます。

 これから冬本番を迎えるにあたり、この調子が続くか予断を許さないところですが、独特の美しさをもつチョウですので、多くのみなさんに楽しんで見ていただけるよう、今後も努力と工夫を続けていきます。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 片田菜美〕

(2017年10月27日)


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