今回は多摩動物公園のメイン通路に面していながら、ふだんあまり目立たない“ネズミ”たちを紹介しましょう。
多摩動物公園で飼育しているネズミは、アカネズミ、ヒメネズミ、スミスネズミ、カヤネズミ、ヤマネ、ハタネズミ(非展示)です。ところが、ネズミ類の展示施設の前で「いないね」という声をよく耳にします。でも、じっくり覗いてみてください。
写真をごらんください。見つけられましたか? ここにはアカネズミがいます。アカネズミは園内でも野生個体が見られる身近なノネズミです。ガラス面右下に置いた木の下に隠れているので、じっくり観察していると毛づくろいをするようすや、巣材を整える姿を見ることができます。
以前、1頭が出入口からせっせと寝床用の落ち葉を運び込み、もう1頭が反対側の隙間から落葉を外に押し出しているところを目撃しました。それぞれにこだわりの仕事があるようです。
次の写真をごらんください。
こちらはヒメネズミです。ヒメネズミはアカネズミに比べて垂直方向に行動する習性があり、地上だけではなく樹上でもくらします。展示室内でも木に登る姿を見ることができるかもしれません。山盛りになっている土やヒマワリの種はヒメネズミが集めたものです。
身近にくらしているにもかかわらず、なかなか見る機会が少ない野生のネズミたち。動物園ならそんな姿や行動をじっくり観察することができます。ぜひ時間をかけてネズミたちの展示を観察してください。
小さく目立ちにくい存在ですが、生態系の中では猛禽類や小動物の貴重なえさになったり、植物の種子散布に一役かったり、大切な役割も果たしています。野外でネズミの活動の痕跡を見つけたら、動物園で見た姿を思い描きながら、身近な存在に感じていただければと思います。
巣の中から顔を出しているカヤネズミ
〔多摩動物公園南園飼育展示係 河本彩花〕
(2017年09月29日)