さまざまな鳥たちと一緒の空間に入ることのできる多摩動物公園の「ウォークインバードケージ」。ここにオシドリがいますが、羽色がきれいなこともあり、じっとしていると置物と間違われることがあります。
オシドリのオスは目立つ派手な体色で知られていますが、メスは地味な印象です。しかし、オシドリをはじめカモのなかまは非繁殖期である夏になると「エクリプス」と呼ばれる状態の羽毛へと変化します。
「エクリプスへ変化する」、なんだか不思議な表現ですが、エクリプスは英語で「日食」等の「食」を意味します。オシドリのオスは、非繁殖期に色鮮やかな姿からメスと同じような地味な羽毛へと変化します。夏になると、来園者の方から「ここにはメスしかいないのですか?」といった質問をいただくこともあります。
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繁殖期のオシドリのオス | エクリプスのオス。繁殖期と違って地味な姿をしている |
エクリプスの状態になると雌雄の区別ができなくなりそうですが、メスのくちばしは羽と同じく灰色なのに対し、オスのくちばしは赤いので見分けることができます。
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エクリプス期のオスはメスと違ってくちばしが赤い | 頭の上部から羽が生え換わり始めたオス |
そして、この原稿を書いている現在、エクリプスの状態から徐々に冬羽へ生え変わりつつあるオスも現れ始めました。頭部は中央から線状に羽毛が生え変わっていくので、途中の姿はさながらモヒカンのようにも見えます。
エクリプスから冬羽に生え変わった羽は美しく、エクリプスが終わった姿はそれこそ置物かと思ってしまうほどです。10月ごろに生え変わり後の美しい姿をぜひとも多摩動物公園に見に来てください。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 田村隼人〕
(2017年09月01日)