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コウノトリ展示場に田んぼ出現!?
 └─2017/08/04

 多摩動物公園の旧モウコノウマ舎上には、コウノトリをたくさん飼育している広いケージがあります。そこに田んぼのようなものをつくりました。地面を掘り、まわりに土を盛り上げて水を張った、ただの大きな水溜りですが、目指したのは田んぼです。


 野生でくらすコウノトリは魚やドジョウ、カエル、水生昆虫などを食べているので、このうした生きものがたくさんすむ田んぼは、コウノトリにとってよいえさ場になります。コウノトリの野生復帰に取り組む施設がある兵庫県豊岡市、福井県越前市、千葉県野田市でも、田んぼのある風景の中にコウノトリがいます。

 私が兵庫県豊岡市を訪れ、野外でコウノトリを目にしたとき、優雅に空を飛ぶ姿はもちろん、田んぼに降りてのんびりと歩いたり、えさを探したりする姿にも大変感動しました。動物園で飼育しているコウノトリはケージの中にいるので、空を飛ぶ姿をみなさんにお見せすることはできませんが、せめて田んぼの中でゆったりとすごすコウノトリの姿を見せることがきればと思い、“田んぼもどき”をつくったのです。

 “田んぼもどき”に水を張ると、コウノトリたちはさっそく水中にくちばしを突っ込み、何かを探すような行動を見せました。それから毎日、えさになるようなものはないはずなのに、中に入って何かを探しています。これまでも、偶然できた水溜りにくちばしをよく突っ込んでいたので、水があると何か探したくなるのはコウノトリの習性なのかもしれません。

 さて、冒頭で田んぼはよいえさ場だと紹介しましたが、すべての田んぼがよいえさ場になるとはかぎりません。コウノトリのえさ場になることを考慮して、農薬の使用や灌水の時期に配慮している田んぼが各地にあります。このような取組みは、豊岡市では「コウノトリ育む農法」、野田市では「黒酢玄米農法」、越前市では「コウノトリ呼び戻す農法」とよばれ、「コウノトリブランド」のお米として売り出されています。


 多摩動物公園のギフトショップでも、コウノトリブランド米の1つである豊岡市の「コウノトリ育むお米」の販売を期間限定で始めました。展示場に作った“田んぼもどき”やギフトショップのお米を通して、動物園にすむコウノトリだけでなく、野生に復帰したコウノトリたちにも思いをはせていただけたらと思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 中島亜美〕

(2017年08月04日)


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