ムフロンといえば、後ろ向きにくるりとカールした大きなツノが特徴的です。とはいってもムフロンの姿が思い浮かばない方や、そもそも名前をはじめて聞いたという方も多いのではないでしょうか?
ムフロンは、ヨーロッパ各地の山岳地帯に生息するヒツジのなかまで、ヒツジ属に分類される野生のヒツジの中でもっとも小さな体をしています。また、私たちがよく知る家畜のヒツジの元となった“ご先祖さま”でもあります。
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大きなツノは立派なオスの証! | 生まれた翌日の「ナポ」と母親 |
多摩動物公園では2017年4月12日、オスのムフロンが誕生しました。生息地のひとつであるコルシカ島がナポレオンの出生地であることから「ナポ」と命名しました。
ところで、最初に書いたとおり、大きなツノがムフロンの特徴の一つですが、このツノはオスにしかなく、生え変わることもありません。ただし、生まれたばかりのオスの赤ちゃんにはツノがありません。たしかに、ツノは誕生の際、じゃまになりそうです。ではオスのツノは、いつごろ、どのように生えてくるのでしょう?
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小さなツノを発見! | ツノは毎日少しずつ大きくなっています! |
観察を続けていると、生後1か月半を過ぎたころ、耳と耳の間の毛をかきわけるようにして小さなツノがひょっこりと顔を出しているのを発見しました。小指の先ほどの小さなツノは毎日少しずつ伸びていき、生後3か月半の現在、長さ約5センチの大きさになりました。すでに後ろ向きに伸びているので、くるりと曲がりながら伸びていく準備が始まっているようです。ツノはまだまだ小さく、色も黒っぽいのですが、これからどう伸びて、成獣と同じ薄茶色に変わっていくのか、引き続き注目していきます。
生後3か月半のナポと母親
最近ナポの体もずいぶんと大きくなり、お母さんからミルクをもらう姿も見られなくなりました。しかし、小さなツノをたずさえて、少しずつオスらしくなってきたものの、独り立ちにはまだまだ時間がかかりそうです。しばらくのあいだ、お母さんといっしょにメスの群れの中で過ごしています。ムフロン展示場の前を通る際は、ナポのツノの成長にも注目してください。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 山本達也〕
(2017年07月28日)