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エミュー「子育て」奮闘記
 └─2017/06/30

 2017年5月10日、多摩動物公園でエミューが1羽孵化しました。しかしここまでの道のりは例年になく厳しく、さまざまなトラブルを乗り越えての繁殖でした。


エミューのひな。小さいときは縞模様がある(2017年6月4日撮影)

 まず、毎年産卵は見られるものの、卵を見つけたときにはすでに割れていることが多かったのです。そこで、産み落としたときに割れないよう、地面に厚くワラを敷きました。

 また、エミューは夕方産卵する習性があるため、夕方に産卵が確認できたら、すぐ卵を回収して孵卵器で育て、孵化直前に親に戻すという計画を立てました。卵を取り上げているあいだ、親には擬卵(つくり物の卵)を抱かせておきます。

 2017年3月17日、複数の卵を孵卵器に収容すると、親は3月21日から擬卵を抱き始めました。ところがその喜びもつかの間、1週間ほどで抱卵をやめてしまったのです。抱いてくれないことには卵を親に戻すこともできません。

 そこで今回は人の手で育てて、大きくなってから群れに戻すことにしました。抱卵中は控えていた清掃を4月7日におこなったのですが、擬卵を回収し忘れてしまいました。すると、なぜか翌日からまた卵を抱き始めたのです。清掃が刺激になったのでしょうか。

 再開した抱卵を絶対に成功させようと決意し、今までの経過を振り返って計画を練り直しました。まず、抱卵を中止した原因は空腹ではないかと考えました。というのも、給餌のために飼育係が動物舎に入ると、親はすぐに体を起こして食べに来てしまうのです。そこで、抱卵しながら食べられるよう、巣の近くにえさをまくようにしました。

 そのかいあってか、なんとか抱卵は続き、5月9日に孵卵器の卵が孵化が始まりました。すぐに親に戻したところ、翌日の朝には無事元気なひな1羽の声を確認することができました。なお、擬卵をそのままにしておくと、親が抱卵を続けてしまい、その結果ひなが窒息死することもあるので、急いですべて取り除きました。

大雨の日にひなを抱えて座っている“夫婦”
(2017年5月13日撮影)
水を飲んでいるひなを見守る
(2017年6月6日撮影)

 何日か経つと、親がひなを連れて歩いたり、大雨の日は一日中座ってひなを抱えたり、親の役割をしっかりと果たしていました。

 なお今回、ちょっと変わった行動に気づきました。エミューは本来、オスが抱卵して子育てをするのですが、なぜかメスも寄り添って座っているのです。とくに悪さするわけでもなく、オスがひなを置いてえさを食べに行くときは、メスがヒナを見守っています。雌雄で子育てをしている姿には、ほほえましさも感じました。このまま健やかに育ってくれることを祈ります。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 田坂清〕

(2017年06月30日)


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