みなさん、昆虫のいちばんの天敵は何でしょう? そう、空を自由に飛ぶ鳥です。昆虫たちは天敵となる鳥から身を守るため、さまざまな工夫をこらして生きています。
しかしこの時期、昆虫園の飼育係の脅威となる鳥もいるのです。その鳥はアオサギ。

多摩動物公園のサル山のそばにアオサギのコロニーが見られます。この時期になると、それぞれのペアが繁殖のための巣作りに励んでいるのです。巣作りの材料となる枝をくわえて飛ぶアオサギの姿を園内でよく観察することができます。せっせと枝を運び、樹上にうまく巣を形作っていく……この場面だけみれば、アオサギの生き生きとした営みがみられるほほえましい光景です。

しかしアオサギは、枝を空から取り落としてしまうことがあります。そして、アオサギの枝運びルート上に(下に?)昆虫の食草管理のためのビニール温室が建っています。勘のよい方はアオサギがもたらす脅威が何なのか、もうおわかりではないでしょうか?
「あの枝落とされたらビニール温室に穴が開いちゃうかもね」──よくないことを不用意に口にするものではありませんね。こんな会話をしてまもなく、温室に枝が落ち、天井のビニールに突き刺さった状態で発見されました。

穴の開いた温室のビニールを修理
アオサギは悪くありません。ましてや枝を落としてしまったことはアオサギにとっても不利益です。やるせない思いを飲み込みながら、今日も「アオサギが無事に枝を運べますように」と祈っています。そしてみなさんがこの記事を読むころには、きっとアオサギも卵を抱いていることと思います。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古川紗織〕
(2017年04月28日)