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似て非なる?隣り合わせのムフロンとタール
 └─2017/01/20

 ムフロンとヒマラヤタール。体毛はおたがいに似た茶色、大きさも似ていますし、草を食べることも同じ。何かと混同されがちなウシ科の2種。放飼場ではムフロンのメス10頭とヒマラヤタールのメス9頭が隣り合っているのですが、別の種類と気づかれないこともしばしば……。「いったいどこが違うの?」という疑問にお答えするために、餌場を中心に比較してみましょう。

ムフロン
ヒマラヤタール

 まず、ムフロンの草入れ(えさとなる草を入れる容器)にはワイヤーが巻いてありますが、タールの草入れにはありません。草が地面に落ちると、ムフロンたちは途端に食べなくなるため、草の落下を防止しているのです。

ムフロン用草入れ(ワイヤーを巻いてある)
ヒマラヤタール用草入れ

 ムフロンは、地面に落ちた草は汚れていなければ食べることもありますが、他の個体が踏みつけたり、水に濡れたりしてしまうとほとんど食べなくなりなります。ただし、地面に落ちた草のうち、汚れていない部分を拾って餌容器に入れるとふたたび食べ始めます。ムフロンにとっての線引きなのでしょう。また、雨に備えて、ムフロンの放飼場にはガス管で作ったペレット容器も設置してあります。

 一方、タールはムフロンとは逆。地面に落ちた草も食べ続けます。好物のペレットにいたっては、水溜りの中に口を突っ込んで食べていることもあります。


タールは餌入れを3か所に分散

 また、タールの放飼場には草入れが3つありますが、ムフロンには1つです。一見おとなしそうに見えるタールですが、群れ内に明確な順位があるようで、弱い個体は強い個体が来ると追い払われたり、萎縮したりして十分に食べられないことが多々あります。そこでえさを3か所に分散し、そのどこかで食べられるようにしています。なお、順位の中で強い個体の子は同じく強く、弱い個体の子はやはり弱い傾向があるようです。一方、ムフロンどうしは多少の押し合いは見られるものの、草入れが1つでも問題はありません。

 このように、ムフロンはえさの状態には敏感ですが闘争は少なく、一方タールは何でも食べますが闘争も生じるという特徴があるようです。

 これまで「どちらも似てるし、地味だし……」とじっくり観察したことがない方は、ぜひ餌場に注目してみてください。2種の違いが見えてくると思います。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 高岡英正〕

(2017年01月20日)


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