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オランウータン施設で初の「スウェイ遊具」!
 └─多摩  2016/10/07

 あるていどの体重がある類人猿にしかできない運動様式の1つに「スウェイ」があります。スウェイとは、幹や枝につかまり、それを体重をかけて揺すってしならせ、その弾性を利用して別の木に移動することです。この移動方法は体力をほとんど使わなくてすむ反面、体重が軽くて学習経験の少ない子どもなどにはむずかしく、難易度の高い運動だと言われています。しかし、類人猿の中でも体重があり樹上生活をするオランウータンにとっては、他の大型類人猿に比べても利用頻度の高い運動様式です。

 このような理由から最近、海外の動物園のオランウータン施設でスウェイを再現できる遊具が多く作られています。しかし、日本ではまだ設置している施設はありませんでした。

 そこで、海外の動物園のスウェイ遊具を参考にしようとしましたが、ベアリングを使用して金属で作られているものが多く、壊れたときのメンテナンスが難点です。

 今回多摩動物公園で設置したのは、児童公園などにある揺れる動物遊具のスプリングを利用し、その上に木を立てられる筒状のポットを溶接したものです。ポットに取り付ける木は取替え可能です。このスプリングは、もともと安全性が考慮されており、子どもが指を挟んでもケガをしない構造になっていますが、大人のオランウータンは人間の子どもよりはるかに力が強いため、スプリングの曲がりを抑制できるよう内側にポリエチレン製の硬い筒を入れました。


 新しい遊具を設置するときは、壊されないかどうかドキドキします。新し物好きのオランウータンは遊具に興味津々でした。すぐに遊具の木にぶら下がったり、揺すったり、折ろうとしたり、しならせてヤグラへ移動したり、壊されることもなく、期待どおりの使い方をしていました。遊具はすぐに飽きてしまうことが多いのですが、移動に利用することができるためか、このスウェイ遊具は設置後半年が過ぎた現在も頻繁に利用し遊んでいます。

【動画:スウェイ遊具を動かしてリキを呼ぶジプシー】

 多摩動物公園には飼育下のオランウータンとしては世界最高齢のメス「ジプシー」(推定61歳)がいますが、高齢とは思えないほど、スウェイ遊具に上ったり揺らしたりしてよく遊びます。最近では遊具として利用するだけではなく、小さな「リキ」の気を引くために遊具を揺らして呼び寄せたりしています。

 ますます活発になったオランウータンたちをぜひ見に来てください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 清水美香〕

(2016年10月07日)


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