2016年6月11日、多摩動物公園ではタスマニアデビルのお披露目式が開かれました。タスマニアデビルの生息地であるタスマニア島で保全活動に取り組む専門家の方や、オーストラリア動物園水族館協会代表、来園した個体を飼育していたトロワナ・ワイルドライフパーク園長、駐日オーストラリア大使館の方などをお迎えし、にぎやかな一日になりました。
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タスマニアデビル公開のお知らせ(2016年6月2日)
日本の動物園での公開は1984年に大阪市の天王寺動物園が最初で、1988年に札幌市の円山動物園が続きましたが、それぞれ1991年と1996年に展示が終了しました。多摩動物公園は3園目、国内でおよそ20年ぶりの公開です。
タスマニアデビルは現在、絶滅危惧種として保護されており、なかなかオーストラリア以外の国では見ることができない動物のひとつです。かつて狩りの対象にもなって激減し、その後感染症に苦しむとともに、交通事故での死亡も少なくないタスマニアデビルは、現在、熱心な保全活動が進められています。
しかし、遺伝的多様性を考慮した繁殖計画にもとづき、野生に放す予定のない個体を海外の動物園に送ってタスマニアデビルの危機的状況について知ってもらうための教育普及プログラムが2013年に現地で始まりました。多摩動物公園もこのプログラムに参加します。
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マルジューナ | メイディーナ |
今回やってきたのは「マルジューナ」と「メイディーナ」のメス2頭。2013年5月1日生まれの姉妹です。
じつは多摩動物公園の職員の中にもタスマニアデビルを実際に見たことがある者はほとんどおらず、今回の来園で初めて見て、「思ったより小さい」「頭が大きい」「走り方が面白い」といった印象を抱きました。
2頭の体重は 5.5キロほどでタヌキくらいです。死んだ動物を丸ごと食べるため、骨も砕ける頑丈な顎をもつためか、頭が大きくずんぐりした体つきです。また、馬のギャロップのように頭を上下に振りながら、リズムのある走り方をします(公開当日、放飼場を駆け回る2頭。東京ズーネット・ツイッターアカウントからVine動画6秒)。
視力はあまりよくないようですが、嗅覚がすぐれており、上を向いてにおいを嗅いでいる姿もよく見ます。5月31日の到着後、すぐに放飼場に出た2頭は、初めこそ恐る恐る探索していましたが、徐々に夢中になり、あちこちのにおいを嗅いだり水路に入ったりするようになりました。
そのうち、巣箱の周りを掘ることに集中し出したため、巣箱に登れるよう板などで坂を作ったところ、すぐに登ったのがメイディーナでした。観察していると、新しいことを先に始めるのはメイディーナで、マルジューナは少ししてから加わることが多いのに気がつきました。また、環境に徐々に慣れてくると、えさを与えられたときに率先して動くのはマルジューナということもわかってきました。
野生のタスマニアデビルは、大きなえさに集まった複数の個体が大きな唸り声をあげて闘争しながら、しかし分け合って食べる習性があります。マルジューナが大きな肉を巣箱に持ち帰った後、メイディーナがやってくると、2頭は争うことなく分け合って食べています。
はじめの2日間は寝室に収容したため、本来夜行性なのに昼間活発に動いていましたが、寝室への収容をやめると寝ている時間のほうが長くなりました。公開後どうなるかと心配していましたが、好奇心旺盛な性格の2頭にとって、来園者の存在もまた新しい興味の対象になったようで、お披露目の日には放飼場を走り回っていました。
今までタスマニアに行かないと見られなかったタスマニアデビル。多摩動物公園で実物を見てください。そばには、タスマニアデビルの特徴や危機的な状況を解説したパネルも設置しました。じっくりと読んで、タスマニアでの現状をぜひ知ってください。
〔多摩動物公園南園飼育展示係 永田典子〕
(2016年06月24日)