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キリン「ワビスケ」沖縄搬出随行記
 └─2016/06/03

 春の訪れを肌に感じる去る2016年3月24日、多摩動物公園からキリンの「ワビスケ」(オス、当時1歳6か月)が「沖縄こどもの国」へ旅立っていきました。繁殖を目指した移動です。今回、東京から沖縄本島まで長距離・長時間の輸送なので、道中の世話をするために随行しました。

 3月24日朝、輸送箱に入れられたワビスケはトラックに載せられ、陸路で鹿児島新港へ向かいました。私は別経路で港に向かいましたが、輸送業者の話では一度だけ広島付近で休憩したそうです。当時、日中は暖かい日もあったのですが、よりによって出発翌日の朝は一段と冷え込み、広島の最低気温はマイナス5℃、ワビスケが経験したことのない寒さになったため心配しました。しかし、体調等に変化は見られないとの報告を受け一安心しました。


カーフェリーの車両デッキにて

 私は多摩を出発してから約32時間後の3月25日15:30に鹿児島新港で合流しました。ここからすぐにカーフェリーに乗り、沖縄本島までは海上輸送です。陸送途中に一度輸送業者にえさを与えてもらいましたが、ほとんど食べていなかったので、用意していたキャベツとシラカシの枝葉を乗船後すぐ与えたところ、最初にキャベツを玉のままかぶりついたのには驚きました。かなり水分を欲していたようです。

 船は貨物船ではなく一般旅客船なので、トラックは一般車両と同じデッキに停め、途中4つの島に寄港しました。航行中、車両デッキへの立ち入りは制限されていたため、車両の出入りがある寄港時と、夜間は船員の監視見回り時間に同行させてもらい、だいたい3〜4時間ごとに見に行きました。ワビスケはいつも落ち着いたようすで立っており、乾草はあまり食べた形跡がなく、バケツに入れた水を飲んだり、陸送でなかばカサカサになったシラカシやバナナを好んで食べたりしました。

 3月26日16:40 に沖縄本島の本部港(もとぶこう)に到着し、ここからふたたび陸送となり、多摩を出発してから2日半後の3月26日18:10 、ようやく沖縄こどもの国に到着しました。


輸送箱から出た直後のワビスケ

 沖縄こどもの国にも当然キリン舎はありますが、冬場でも暖かいので部屋に入れる習慣がないとのことでした。そのため、放飼場に輸送箱を置き、飼育係もいる状態で外に出すという荒わざ!?に少々驚きましたが、ワビスケはそんなことは気にもせず、輸送箱から出るとまず水を飲み、遠くにいるメス2頭を気にするようにせわしなく柵沿いを行き来し始めました。そこでメス2頭と柵越しに触れ合えるようにしたところ、ようやく落ち着きを取り戻しました。


メス2頭と触れあうワビスケ

 約59時間ものあいだ、輸送箱の中で一度も座らずに落ち着いて過ごしたワビスケに敬意を表すると同時に、気力・体力の備わったワビスケが今後彼の地で活躍してくれることを確信し、帰路につくことができました。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水勲〕

(2016年06月03日)


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