みなさんは昆虫生態園の入口にある南西諸島の昆虫コーナーで展示しているダイトウクダマキモドキをごぞんじでしょうか? 飼育作業をしていると来園者の方々の会話が聞こえてくるのですが、おそらく8割以上の方が、名前を読み上げるのに苦労しています。
「だいとう・・・だまき、もどき?」。そうですね、たしかに意味がわかりづらいので読みづらいのだと思います。

クダマキモドキはキリギリスに近いなかまです。「クダマキ」とはクツワムシの別名で、クツワムシに似ていることから「モドキ」という言葉がつき、クダマキモドキという名前になりました。南西諸島にいるクダマキモドキ、という意味で大東諸島の「ダイトウ」が頭についています。こうして名前の由来を覚えるとわかりやすいかもしれません。
さて、このダイトウクダマキモドキですが、餌としておもにコマツナとリンゴを与えています。最近、この食事にいろどりが添えられるようになりました。それは菜の花です。
通常、動物園で餌に使用する野菜や果物は購入したものが毎日届くのですが、去年の冬に昆虫園の裏側でバッタ担当の職員が餌の予備としてコマツナを育てていました。そのコマツナがすくすく育ち、春になるときれいな花が咲きました。
バッタ目のなかまの中で、幼虫が花や花粉を食べる種類が知られています。そこで、菜の花を分けてもらい、ダイトウクダマキモドキにも与えてみることにしたのです。すると幼虫だけではなく成虫も、葉より花のほうを好んで食べているようでした。バッタ担当の職員の話によると、飼育しているバッタ類も菜の花をよく食べているということです。
花より団子ならぬ、花も団子。もうじき花の時期も終わりですが、それまで春の味覚を楽しんでもらう予定です。昆虫生態園で、ぜひ花も虫も愛でていただければと思います。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 古川紗織〕
(2016年04月22日)